『今、皆さんの前には六つのドアがあると思いマス。この部屋から外の出口に繋がっているのは、そのうちの一つノミ。あとの五つは偽物でございマス』
アナウンスの説明が続く。
『それぞれのドアの向こうには、AIを搭載したロボットがおりマス。ドアをノックして質問をすると、ロボットがあなたの質問に“イエス”か“ノー”で答えマス。“イエス”と“ノー”で答えられない質問は無効。さらに、質問は全て、異なるものでなくてはいけまセン。例えば赤いドアをノックして『あなたのドアは出口につながっていますか』と質問した場合、別のドアのロボットに同じ意図の質問はできまセン』
「逢花さん、覚えられなさそうだったらメモを活用してください。メモ帳か携帯電話はありますか?」
「あ!う、うん。メモする!」
少々ややこしいルールのようだ。逢花は慌ててスマホのメモ帳を取り出してメモをし始める。幸い、打つのは早い。ほぼブラインドタッチで行ける。
『注意するべきは、六体のロボットのうち、“ドアを閉じた状態で”本当のことを言うロボットは一体のみというコト。あとの五体は、全て嘘で答えます』
この問題って、と逢花は眉をひそめる。確か、いつかの算数の授業でやったことがあるような気がする。いくつかの選択の中、誰が本当のことを言っているのか当てるゲーム。勉強はあまり好きではないが、この分野だけはパズルみたいで面白いなと思った記憶があった。
ただ今回は、質問を自分で考えなければいけないこと。さらに本当のことを言う者が一人だけという点に注意が必要なのだろう。慎重に、質問の内容を精査しなければなるまい。
『ドアに鍵はかかっておりまセン。ドアを開けて問いを行うと、全てのロボットが“本当のこと”を語りマス。ただし、ドアを開けるとトラップが作動する可能性がありマス。それによって大きな怪我をしたり、命を落とす危険もあることに留意してくだサイ』
「なっ……!」
『出口は、ロボットが配備してある後ろのドアとなりマスが。間違ったドアに入っても、当然トラップは作動しマス。勿論、ドアを無理やり壊したり、ロボットを破壊したりするようなルール違反の行為を行えば即失格、その場合もトラップが作動して処刑されますのでご注意くだサイ……』
予想できた範囲ではある、が。それでも滅茶苦茶すぎる。
質問を考えるのも自分でやれ。どのドアを開けるかも自分でやれ、とは。普通の選択問題とは、趣が大きく異なっているではないか。
『ちなみに、ルール違反をした人がどうなったかは、過去のゲームの様子を見ていただければわかるでショウ』
声がそう告げた途端、左側の壁に再びプロジェクターのごとく映像が浮かびあがった。一人の男が、部屋の中でイライラと頭をかきむしっている。彼の目の前にも、六つのドアが。同じゲームをさせられているのは間違いなさそうだ。
『わかんねーよこんなの!くそ、どれが本物の出口なんだよ畜生が!』
部屋の中では、わん、わん、という音と共に赤い光が点滅している。男はしばしイライラと歩き回ったところで、そうだ!と名案を思い付いたように顔を上げた。
『トラップごと、ドアを壊しちまえばいいんじゃねえ!?そうだ、それがいい。全部のドアとトラップぶっ壊しちまえばよ、どれかは出口に繋がってるっつーことだろ!?トラップが壊れてりゃ、何も怖いことはないもんな!!』
彼は己の腕輪に触れた。どうやら、能力を使って強引に解決するつもりであるようだ。そういうのをフラグって言うんだけど、と逢花は冷や汗をかきながら映像を見つめる。
『よし、“爆弾”作動!』
まず赤いドアに触れると、彼は能力名らしきものを唱えた。そしてすぐさまドアから遠く離れた場所まで退避する。数秒後、轟音とともに吹き飛ぶ赤いドア。どうやら、己が触れたものに見えない爆弾を仕掛けることができる能力、らしい。数秒後に大きな威力で爆発する、といったところか。相手に触れなければいけないリスクはあるが、火力は申し分なさそうだ。
『これだけ派手に吹き飛ばせば、中のトラップも粉々になってるはずだろ!ふん、面倒な謎解きなんかやってられるかってんだ!』
彼は満足そうに笑うと、そのまま赤いドアだった部屋の中へと入っていくその奥がどのように破壊されているのか、焼けただれているのかどうかなどは自分達の角度からはわからない。なんせ、映像は部屋を斜め上から撮影したものであるからだ。
そして、予想できた惨劇が。
『げぼっ!?』
濁った男の悲鳴が、中から響く。次にウイイイイイイイイイイイン、というチェーンソーが動くような音が響き始めた。
『ひ、ぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!?な、なんで、なん、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
あっという間に、悲鳴は断末魔へと変わった。何かの機械が動く音と共に、バキバキ、ともねちょねちょ、ともつかぬ音色が断続的に響く。昔テレビで見た、古い精肉工場の音だ、と思ってしまい――逢花は思わず口元を抑えた。部屋の中で、恐らく人間がハンバーグにされている。音がひびくたび、ねっちょりとしたねばっこい血が、広間の中に飛び散っては跳ねていくのだ。赤いドアの空間の向こうは、一体どれほどの惨事になっているのか。
『ルール違反デス』
アナウンスが繰り返し、赤いサイレンと共に響く。
『ルール違反デス。ルール違反デス。ルール違反デス。よって、参加者ナンバー168328号、処刑となりまシタ。繰り返しマス……』
最後に、何か塊のようなものがべしょり、と部屋の中から吐き出された。とても小さくて見づらいが、五本の突起がついていることだけは見て取れる。切り刻まれた人の、手首から先なのだ。それがわかってしまい、逢花は吐き気を強引に飲み込む羽目となった。本当に、嘔吐しなかった自分を褒めたいほどである。
『おわかりになりましたカ?』
映像が消失するころには、全身にびっしょりと汗を掻いていた。
『正攻法で攻略すれバ、貴方がたは助かりマス。それでハ、健闘を祈りマス』
何が健闘を祈るだクソッタレ。口の中で汚い罵倒を噛み砕いた。本当に、連中は人の命を命とも思っていないらしい。こんな映像を小学生に見せるなと心の底から思う。確かに、実際に自分が見たのはほぼ血飛沫だけで、人が残酷にこねられている様をはっきり見せつけられたわけではないけれど。
「……相変わらず、甘いゲームはさせてくれないようで」
ずっと黙り込んでいた葉流が口を開いた。
「正攻法で、ですか。……そう思うなら、ルールは全てはっきりと口で教えて頂きたいところですね」
「え?」
「わかりませんか?」
彼の顔は険しい。ドアを指示しながら、このゲームですけど、と続ける。
「算数やパズルでやったことがあるならなんとなく想像がつくかもしれませんが……パズルなどでは、質問とその回答が先に示されていることが多いですよね。一つのドアにつき一つずつ答えが示されていて、“嘘をついている者が一人いる”とか“本当のことを言っているのは一人しかいない”とかそう記載があるのが一般的と思います。……そう、このゲームは、質問回数が限られていなければ成り立たないんです。何故なら一つのドアのロボットに対して無限に質問ができてしまうのなら、答えに到達することは非常に簡単になってしまうから」
言われてみればその通りだ。
それこそ赤いドアのロボットにばかり、“青いドアは出口か?”“黄色のドアは出口か?”みたいに質問を繰り返して行けば――赤いドアのロボットが言っている言葉が本当か嘘かに限らず、容易く出口を見つけ出してしまうだろう。何故なら本当ならば、一か所だけの出口を正確に答えるだろうし、嘘ならば偽物の出口を全て“出口である”と答えるに決まっているからだ。
「言われてないけど、回数制限がある可能性が高いってこと?」
「僕はそう考えてます。同時に、見えないけれどタイムリミットがある可能性も高いのではないでしょうか。先ほどの映像では、赤いサイレンが鳴り響いていました。一定時間以上部屋に滞在するか、一定回数以上質問をするとサイレンが鳴り響き警告をする……仕組みである可能性は非常に高いと思いますね」
なるほど、ルールは全部教えろとも言いたくなるだろう。なんとも不親切設計すぎる。正確なタイムリミットも、回数制限も教えてくれないとは。
「どんな質問をするのかは、慎重に考えなくちゃいけない。でも、のんびり時間をかけているわけにもいかないってわけか……」
さらに、考えるべきことはもう一つある。
ドアを開けて、“問い”を行うべきかどうか、だ。アナウンスは言った。ドアを開けて行う質問には、どのロボットも本当のことを答えるだろう、と。ただし、その際にトラップが作動して死ぬ可能性があるので注意せよ、と。
――回数制限がややこしいな。全部のドアの住人に一回ずつ質問をするのは多分セーフ。でも、それはドアを開けて質問した回数が含まれるのか、どうか。……含まれると思っていた方がいいのかな、これは。
勿論最終手段として、イチかバチかで六つのドアの一つに突撃して出口を目指してみるというのもあるだろう。ただ、六分の一という、けして高くはない確率であることを忘れてはいけない。せめて、ある程度ドアの数を絞ってからでなければお話にならないだろう。
「恐らくですが……本当の出口、に繋がるドアにはトラップがないか、死ぬ心配のない軽微なトラップしか仕掛けられていないと思われます。せっかくの正解を見つけたのに、ドアを開けた途端死んでしまってはゲームの意味がありませんから」
「あー……確かに」
「しかし、それを根拠にドアをかたっぱしから開けていくのは到底お勧めできません。あの物言いだと、六つのうち最低でも一つは即死トラップでしょうから」
「だ、だよねー……」
その上で、考えなくてはいけない。
どのドアに、どの質問を投げかけるのかどうか。ただし、ノックをした上で帰ってくる質問は、六分の五の確率で“嘘”であることを留意した上で。
「五つのドアに、ノックをして質問。一つのドアを開けて直接質問。……恐らくその数ならば、回数制限にギリギリ引っかからないでしょう。六つのドアすべてにノックごしに質問をした上で、ドアを開けて質問をするのも許されるのかどうか……は少々不確定ですしね」
同じことを葉流も思っていたらしい。その上で、と彼は続ける。
「質問は相談して、慎重に決めましょう。……まずは逢花さん、あなたならどのドアに、どんな質問をしますか?」
アナウンスの説明が続く。
『それぞれのドアの向こうには、AIを搭載したロボットがおりマス。ドアをノックして質問をすると、ロボットがあなたの質問に“イエス”か“ノー”で答えマス。“イエス”と“ノー”で答えられない質問は無効。さらに、質問は全て、異なるものでなくてはいけまセン。例えば赤いドアをノックして『あなたのドアは出口につながっていますか』と質問した場合、別のドアのロボットに同じ意図の質問はできまセン』
「逢花さん、覚えられなさそうだったらメモを活用してください。メモ帳か携帯電話はありますか?」
「あ!う、うん。メモする!」
少々ややこしいルールのようだ。逢花は慌ててスマホのメモ帳を取り出してメモをし始める。幸い、打つのは早い。ほぼブラインドタッチで行ける。
『注意するべきは、六体のロボットのうち、“ドアを閉じた状態で”本当のことを言うロボットは一体のみというコト。あとの五体は、全て嘘で答えます』
この問題って、と逢花は眉をひそめる。確か、いつかの算数の授業でやったことがあるような気がする。いくつかの選択の中、誰が本当のことを言っているのか当てるゲーム。勉強はあまり好きではないが、この分野だけはパズルみたいで面白いなと思った記憶があった。
ただ今回は、質問を自分で考えなければいけないこと。さらに本当のことを言う者が一人だけという点に注意が必要なのだろう。慎重に、質問の内容を精査しなければなるまい。
『ドアに鍵はかかっておりまセン。ドアを開けて問いを行うと、全てのロボットが“本当のこと”を語りマス。ただし、ドアを開けるとトラップが作動する可能性がありマス。それによって大きな怪我をしたり、命を落とす危険もあることに留意してくだサイ』
「なっ……!」
『出口は、ロボットが配備してある後ろのドアとなりマスが。間違ったドアに入っても、当然トラップは作動しマス。勿論、ドアを無理やり壊したり、ロボットを破壊したりするようなルール違反の行為を行えば即失格、その場合もトラップが作動して処刑されますのでご注意くだサイ……』
予想できた範囲ではある、が。それでも滅茶苦茶すぎる。
質問を考えるのも自分でやれ。どのドアを開けるかも自分でやれ、とは。普通の選択問題とは、趣が大きく異なっているではないか。
『ちなみに、ルール違反をした人がどうなったかは、過去のゲームの様子を見ていただければわかるでショウ』
声がそう告げた途端、左側の壁に再びプロジェクターのごとく映像が浮かびあがった。一人の男が、部屋の中でイライラと頭をかきむしっている。彼の目の前にも、六つのドアが。同じゲームをさせられているのは間違いなさそうだ。
『わかんねーよこんなの!くそ、どれが本物の出口なんだよ畜生が!』
部屋の中では、わん、わん、という音と共に赤い光が点滅している。男はしばしイライラと歩き回ったところで、そうだ!と名案を思い付いたように顔を上げた。
『トラップごと、ドアを壊しちまえばいいんじゃねえ!?そうだ、それがいい。全部のドアとトラップぶっ壊しちまえばよ、どれかは出口に繋がってるっつーことだろ!?トラップが壊れてりゃ、何も怖いことはないもんな!!』
彼は己の腕輪に触れた。どうやら、能力を使って強引に解決するつもりであるようだ。そういうのをフラグって言うんだけど、と逢花は冷や汗をかきながら映像を見つめる。
『よし、“爆弾”作動!』
まず赤いドアに触れると、彼は能力名らしきものを唱えた。そしてすぐさまドアから遠く離れた場所まで退避する。数秒後、轟音とともに吹き飛ぶ赤いドア。どうやら、己が触れたものに見えない爆弾を仕掛けることができる能力、らしい。数秒後に大きな威力で爆発する、といったところか。相手に触れなければいけないリスクはあるが、火力は申し分なさそうだ。
『これだけ派手に吹き飛ばせば、中のトラップも粉々になってるはずだろ!ふん、面倒な謎解きなんかやってられるかってんだ!』
彼は満足そうに笑うと、そのまま赤いドアだった部屋の中へと入っていくその奥がどのように破壊されているのか、焼けただれているのかどうかなどは自分達の角度からはわからない。なんせ、映像は部屋を斜め上から撮影したものであるからだ。
そして、予想できた惨劇が。
『げぼっ!?』
濁った男の悲鳴が、中から響く。次にウイイイイイイイイイイイン、というチェーンソーが動くような音が響き始めた。
『ひ、ぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!?な、なんで、なん、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
あっという間に、悲鳴は断末魔へと変わった。何かの機械が動く音と共に、バキバキ、ともねちょねちょ、ともつかぬ音色が断続的に響く。昔テレビで見た、古い精肉工場の音だ、と思ってしまい――逢花は思わず口元を抑えた。部屋の中で、恐らく人間がハンバーグにされている。音がひびくたび、ねっちょりとしたねばっこい血が、広間の中に飛び散っては跳ねていくのだ。赤いドアの空間の向こうは、一体どれほどの惨事になっているのか。
『ルール違反デス』
アナウンスが繰り返し、赤いサイレンと共に響く。
『ルール違反デス。ルール違反デス。ルール違反デス。よって、参加者ナンバー168328号、処刑となりまシタ。繰り返しマス……』
最後に、何か塊のようなものがべしょり、と部屋の中から吐き出された。とても小さくて見づらいが、五本の突起がついていることだけは見て取れる。切り刻まれた人の、手首から先なのだ。それがわかってしまい、逢花は吐き気を強引に飲み込む羽目となった。本当に、嘔吐しなかった自分を褒めたいほどである。
『おわかりになりましたカ?』
映像が消失するころには、全身にびっしょりと汗を掻いていた。
『正攻法で攻略すれバ、貴方がたは助かりマス。それでハ、健闘を祈りマス』
何が健闘を祈るだクソッタレ。口の中で汚い罵倒を噛み砕いた。本当に、連中は人の命を命とも思っていないらしい。こんな映像を小学生に見せるなと心の底から思う。確かに、実際に自分が見たのはほぼ血飛沫だけで、人が残酷にこねられている様をはっきり見せつけられたわけではないけれど。
「……相変わらず、甘いゲームはさせてくれないようで」
ずっと黙り込んでいた葉流が口を開いた。
「正攻法で、ですか。……そう思うなら、ルールは全てはっきりと口で教えて頂きたいところですね」
「え?」
「わかりませんか?」
彼の顔は険しい。ドアを指示しながら、このゲームですけど、と続ける。
「算数やパズルでやったことがあるならなんとなく想像がつくかもしれませんが……パズルなどでは、質問とその回答が先に示されていることが多いですよね。一つのドアにつき一つずつ答えが示されていて、“嘘をついている者が一人いる”とか“本当のことを言っているのは一人しかいない”とかそう記載があるのが一般的と思います。……そう、このゲームは、質問回数が限られていなければ成り立たないんです。何故なら一つのドアのロボットに対して無限に質問ができてしまうのなら、答えに到達することは非常に簡単になってしまうから」
言われてみればその通りだ。
それこそ赤いドアのロボットにばかり、“青いドアは出口か?”“黄色のドアは出口か?”みたいに質問を繰り返して行けば――赤いドアのロボットが言っている言葉が本当か嘘かに限らず、容易く出口を見つけ出してしまうだろう。何故なら本当ならば、一か所だけの出口を正確に答えるだろうし、嘘ならば偽物の出口を全て“出口である”と答えるに決まっているからだ。
「言われてないけど、回数制限がある可能性が高いってこと?」
「僕はそう考えてます。同時に、見えないけれどタイムリミットがある可能性も高いのではないでしょうか。先ほどの映像では、赤いサイレンが鳴り響いていました。一定時間以上部屋に滞在するか、一定回数以上質問をするとサイレンが鳴り響き警告をする……仕組みである可能性は非常に高いと思いますね」
なるほど、ルールは全部教えろとも言いたくなるだろう。なんとも不親切設計すぎる。正確なタイムリミットも、回数制限も教えてくれないとは。
「どんな質問をするのかは、慎重に考えなくちゃいけない。でも、のんびり時間をかけているわけにもいかないってわけか……」
さらに、考えるべきことはもう一つある。
ドアを開けて、“問い”を行うべきかどうか、だ。アナウンスは言った。ドアを開けて行う質問には、どのロボットも本当のことを答えるだろう、と。ただし、その際にトラップが作動して死ぬ可能性があるので注意せよ、と。
――回数制限がややこしいな。全部のドアの住人に一回ずつ質問をするのは多分セーフ。でも、それはドアを開けて質問した回数が含まれるのか、どうか。……含まれると思っていた方がいいのかな、これは。
勿論最終手段として、イチかバチかで六つのドアの一つに突撃して出口を目指してみるというのもあるだろう。ただ、六分の一という、けして高くはない確率であることを忘れてはいけない。せめて、ある程度ドアの数を絞ってからでなければお話にならないだろう。
「恐らくですが……本当の出口、に繋がるドアにはトラップがないか、死ぬ心配のない軽微なトラップしか仕掛けられていないと思われます。せっかくの正解を見つけたのに、ドアを開けた途端死んでしまってはゲームの意味がありませんから」
「あー……確かに」
「しかし、それを根拠にドアをかたっぱしから開けていくのは到底お勧めできません。あの物言いだと、六つのうち最低でも一つは即死トラップでしょうから」
「だ、だよねー……」
その上で、考えなくてはいけない。
どのドアに、どの質問を投げかけるのかどうか。ただし、ノックをした上で帰ってくる質問は、六分の五の確率で“嘘”であることを留意した上で。
「五つのドアに、ノックをして質問。一つのドアを開けて直接質問。……恐らくその数ならば、回数制限にギリギリ引っかからないでしょう。六つのドアすべてにノックごしに質問をした上で、ドアを開けて質問をするのも許されるのかどうか……は少々不確定ですしね」
同じことを葉流も思っていたらしい。その上で、と彼は続ける。
「質問は相談して、慎重に決めましょう。……まずは逢花さん、あなたならどのドアに、どんな質問をしますか?」



