「……俺の事好きって言ってくれなくなったくせに…」
「言ったら由佐は困るでしょ」
「……」
「小学校の高学年くらいから好きって言うと少し困った顔するようになったから、あんまり言うのはよくないのかなって思って中学上がってからは心の中で言うようにしてたんだよ」
そういう事はきちんと宣言してからにしてくれないとわからない。
困った顔をしたつもりはなかったんだけど、そんな顔してたのかな。
智輝はみんなの前でも堂々と好き好き言うから恥ずかしかっただけじゃないのか。
それはたぶん恥ずかしかっただけで智輝の気持ちが嫌だったわけじゃない。
そう言うと智輝は『なんだ、早く言ってよ』とほっとした顔を見せた。
「………なんで俺のチョコ、わかるの…?」
「だって由佐からのチョコはいつも三つ葉のクローバーのシールが貼ってあるから」
「……気付いてくれてたんだ」
「当たり前だよ。由佐は昔から自分を三つ葉だって言ってたでしょ。でもね、」
智輝がこつんと俺の額に額を当てる。
「俺には由佐が唯一の四つ葉のクローバーなんだよ」
「違うし」
「ここは否定するところじゃない」
「……」
恥ずかしい言葉をさらりと言われて顔が熱い。
イケメンは言う事が違う。
って感心してる場合じゃない。
俺も素直にならないと。
「……俺、智輝が好き…。少しだけじゃなくてすごく好き。チョコだっていつも本命だったよ」
「俺も由佐が好き。ずっとずっと大好き」
ゆっくり智輝の顔が近付いてきて慌ててよける。
これはマズイ。
「なんでよけるの? やっぱり俺が近付くの嫌?」
「違う。忘れてたけど、俺、今おでこにニキビできてて近くで見られるのやだ」
「キスの時は目を瞑るから見えないよ」
「あ、そっか」
と答えてから“キス”という単語に顔が猛烈に熱くなる。
顔から火が出るかも。
あとちょっとでキスするところだったのかと思うと恥ずかし過ぎてやっぱり逃げ出したい。
「男子のおでこのニキビは“思われニキビ”だから、俺の“好き”のせいかもね」
「なにそれ。じゃあこの治らないニキビは智輝のせいなの!?」
「しつこいでしょ」
「バレンタインの翌日にできてからずっとケアしてるのに全然よくならないよ!」
俺が嘆くと智輝が微笑む。
「俺の“好き”を受け取ったから明日には綺麗に治るよ」
智輝の唇がゆっくり重なる。
俺は目を瞑る余裕もなかった。
ていうかいつ目を瞑っていいのかもわからなかった。
超至近距離で見た智輝はピンボケしているにも関わらずかっこいい。
翌日、智輝の言った通りにニキビは跡形もなく治っていた。
次の晴れた日に公園でまた智輝と四つ葉のクローバー探しをしたけれど、四つ葉は見つからなかった。
でも智輝は三つ葉を手にして幸せそうに笑っている。
三つ葉のクローバーでも幸せになれると、智輝が教えてくれた。
そして三つ葉のクローバーみたいな俺の、四つ葉のクローバーの智輝への恋が叶って幸せになれる事も、智輝が教えてくれた。
「由佐、なに考えてるの?」
「智輝の事」
「それならキスしていい?」
「!?」
掠めるように唇が触れる。
「もうしちゃった」
悪戯っ子のような笑みを見せる智輝と真っ赤な俺。
三つ葉のクローバーがそんな俺達を見守るように風に揺れている。
END
「言ったら由佐は困るでしょ」
「……」
「小学校の高学年くらいから好きって言うと少し困った顔するようになったから、あんまり言うのはよくないのかなって思って中学上がってからは心の中で言うようにしてたんだよ」
そういう事はきちんと宣言してからにしてくれないとわからない。
困った顔をしたつもりはなかったんだけど、そんな顔してたのかな。
智輝はみんなの前でも堂々と好き好き言うから恥ずかしかっただけじゃないのか。
それはたぶん恥ずかしかっただけで智輝の気持ちが嫌だったわけじゃない。
そう言うと智輝は『なんだ、早く言ってよ』とほっとした顔を見せた。
「………なんで俺のチョコ、わかるの…?」
「だって由佐からのチョコはいつも三つ葉のクローバーのシールが貼ってあるから」
「……気付いてくれてたんだ」
「当たり前だよ。由佐は昔から自分を三つ葉だって言ってたでしょ。でもね、」
智輝がこつんと俺の額に額を当てる。
「俺には由佐が唯一の四つ葉のクローバーなんだよ」
「違うし」
「ここは否定するところじゃない」
「……」
恥ずかしい言葉をさらりと言われて顔が熱い。
イケメンは言う事が違う。
って感心してる場合じゃない。
俺も素直にならないと。
「……俺、智輝が好き…。少しだけじゃなくてすごく好き。チョコだっていつも本命だったよ」
「俺も由佐が好き。ずっとずっと大好き」
ゆっくり智輝の顔が近付いてきて慌ててよける。
これはマズイ。
「なんでよけるの? やっぱり俺が近付くの嫌?」
「違う。忘れてたけど、俺、今おでこにニキビできてて近くで見られるのやだ」
「キスの時は目を瞑るから見えないよ」
「あ、そっか」
と答えてから“キス”という単語に顔が猛烈に熱くなる。
顔から火が出るかも。
あとちょっとでキスするところだったのかと思うと恥ずかし過ぎてやっぱり逃げ出したい。
「男子のおでこのニキビは“思われニキビ”だから、俺の“好き”のせいかもね」
「なにそれ。じゃあこの治らないニキビは智輝のせいなの!?」
「しつこいでしょ」
「バレンタインの翌日にできてからずっとケアしてるのに全然よくならないよ!」
俺が嘆くと智輝が微笑む。
「俺の“好き”を受け取ったから明日には綺麗に治るよ」
智輝の唇がゆっくり重なる。
俺は目を瞑る余裕もなかった。
ていうかいつ目を瞑っていいのかもわからなかった。
超至近距離で見た智輝はピンボケしているにも関わらずかっこいい。
翌日、智輝の言った通りにニキビは跡形もなく治っていた。
次の晴れた日に公園でまた智輝と四つ葉のクローバー探しをしたけれど、四つ葉は見つからなかった。
でも智輝は三つ葉を手にして幸せそうに笑っている。
三つ葉のクローバーでも幸せになれると、智輝が教えてくれた。
そして三つ葉のクローバーみたいな俺の、四つ葉のクローバーの智輝への恋が叶って幸せになれる事も、智輝が教えてくれた。
「由佐、なに考えてるの?」
「智輝の事」
「それならキスしていい?」
「!?」
掠めるように唇が触れる。
「もうしちゃった」
悪戯っ子のような笑みを見せる智輝と真っ赤な俺。
三つ葉のクローバーがそんな俺達を見守るように風に揺れている。
END



