雨はそんなにひどくはないけどそれなりに濡れてしまっている。
でも俺は手を止めずに三つ葉の中から四つ葉を探す。
智輝の幸せを探す。
「由佐!?」
「…?」
呼ばれて顔を上げると智輝がこちらに走ってきている。
相変わらずかっこいい。
今日は落ち込んだ顔をしていない。
慌てた顔をしている。
「なにしてるの!?」
「四つ葉のクローバー探してる」
「こんな雨の中で!?」
「うん。さっきは晴れてたし」
「風邪ひくよ! 帰ろう?」
智輝が傘を差しかけるけれど俺はまだしゃがみ込んで四つ葉を探す。
「やだ」
智輝の幸せを見つける。
それで俺は智輝を諦める。
「由佐、言う事聞いて」
「やだ」
「どうして?」
「だって…智輝が…」
「俺が?」
「……」
言えない。
唇を噛むと智輝も傘を置いて三つ葉に手を伸ばす。
「智輝?」
「俺も一緒に探す」
「なんで?」
「ふたりで探せばもっと早く見つかるから」
「ここにはないかもしれないよ」
「由佐が探してるんだから絶対ある」
「……」
智輝もしゃがみ込んで四つ葉探しを始める。
雨が智輝の頬を伝い落ちていって、それがすごく綺麗で思わず見惚れてしまった。
俺も続けて四つ葉を探す。
雨は徐々に弱くなっていくけれど止みはしない。
さらさらと落ちる雨粒の中で高校生がふたりで四つ葉探しって怪しいと思う。
でも俺も智輝も手を止めなかった。
「…由佐、」
「なに?」
そういえば智輝の声を聞くのって久しぶりかも。
最近は顔を合わせても智輝がひどく落ち込んでいて声を聞いていなかった。
ちょっとどきどきする。
「なんで今年はチョコくれなかったの?」
「え?」
「バレンタイン」
智輝は手元を見たまま俺に聞く。
俺は一旦上げた視線をまた手元に戻して答える。
「…智輝、好きな子からしかもらわない事にしたって聞いたから」
あれ?
智輝はなんで『今年は』って言ったんだろう。
今までのチョコだっていつも机に入れていて、名前を書いていなかったから誰からかわからないはずなのに。
「俺、由佐からのチョコしかもらわないつもりだったのに」
「えっ!?」
え?
どういう事?
「ねえ、由佐」
「なに?」
「俺の気持ち、一欠片も気付いてない?」
「智輝の気持ち…?」
なにそれ。
智輝が顔を上げて俺をじっと見る。
すごく熱っぽい視線。
「『俺のものにならない?』ってよく言ってるよね?」
「え、でもそのあと『なんてね』って……冗談でしょ?」
「冗談なんかじゃないよ」
また智輝は視線を手元に移す。
俺は視線を動かせない。
智輝の綺麗な黒髪を滑ってぽたりと雨粒が落ちる。
「俺はずっと由佐が好きだった」
「…え?」
「でもチョコもらえなくてへこんだ。由佐に振られたから」
「ふ…!?」
振ってなんかいない。
振るわけがない。
「俺、由佐が好きだよ。由佐が俺をそんなに好きじゃなくても」
「え?」
「由佐、俺が近付くといつも身体引くから、近付かれたくないんだろうなってわかってるけど俺は由佐に近付きたい」
「え??」
「俺は由佐を抱き締めたい」
「……」
「義理チョコだっていいから由佐のチョコ欲しかった。少しだけでも好きでいてくれてるって毎年確認できて嬉しかったのに」
「……」
義理チョコ……少しだけでも…。
なんか勘違いされてる?
っていうか誤解がある…?
どくんどくん脈が速くなる。
「……だって俺、智輝が近付くと心臓おかしくなるから」
「由佐?」
「俺だって智輝が好きだけど、俺なんかがそんな事言っちゃいけないって、ずっと…っ」
涙がぼろぼろ落ちてきてしまった。
雨と涙が混じって頬を伝い落ちていく。
智輝が慌てて拭おうとするけど、手が泥だらけなので慌てて手を引いてシャツの袖で拭いてくれる。
でも俺は手を止めずに三つ葉の中から四つ葉を探す。
智輝の幸せを探す。
「由佐!?」
「…?」
呼ばれて顔を上げると智輝がこちらに走ってきている。
相変わらずかっこいい。
今日は落ち込んだ顔をしていない。
慌てた顔をしている。
「なにしてるの!?」
「四つ葉のクローバー探してる」
「こんな雨の中で!?」
「うん。さっきは晴れてたし」
「風邪ひくよ! 帰ろう?」
智輝が傘を差しかけるけれど俺はまだしゃがみ込んで四つ葉を探す。
「やだ」
智輝の幸せを見つける。
それで俺は智輝を諦める。
「由佐、言う事聞いて」
「やだ」
「どうして?」
「だって…智輝が…」
「俺が?」
「……」
言えない。
唇を噛むと智輝も傘を置いて三つ葉に手を伸ばす。
「智輝?」
「俺も一緒に探す」
「なんで?」
「ふたりで探せばもっと早く見つかるから」
「ここにはないかもしれないよ」
「由佐が探してるんだから絶対ある」
「……」
智輝もしゃがみ込んで四つ葉探しを始める。
雨が智輝の頬を伝い落ちていって、それがすごく綺麗で思わず見惚れてしまった。
俺も続けて四つ葉を探す。
雨は徐々に弱くなっていくけれど止みはしない。
さらさらと落ちる雨粒の中で高校生がふたりで四つ葉探しって怪しいと思う。
でも俺も智輝も手を止めなかった。
「…由佐、」
「なに?」
そういえば智輝の声を聞くのって久しぶりかも。
最近は顔を合わせても智輝がひどく落ち込んでいて声を聞いていなかった。
ちょっとどきどきする。
「なんで今年はチョコくれなかったの?」
「え?」
「バレンタイン」
智輝は手元を見たまま俺に聞く。
俺は一旦上げた視線をまた手元に戻して答える。
「…智輝、好きな子からしかもらわない事にしたって聞いたから」
あれ?
智輝はなんで『今年は』って言ったんだろう。
今までのチョコだっていつも机に入れていて、名前を書いていなかったから誰からかわからないはずなのに。
「俺、由佐からのチョコしかもらわないつもりだったのに」
「えっ!?」
え?
どういう事?
「ねえ、由佐」
「なに?」
「俺の気持ち、一欠片も気付いてない?」
「智輝の気持ち…?」
なにそれ。
智輝が顔を上げて俺をじっと見る。
すごく熱っぽい視線。
「『俺のものにならない?』ってよく言ってるよね?」
「え、でもそのあと『なんてね』って……冗談でしょ?」
「冗談なんかじゃないよ」
また智輝は視線を手元に移す。
俺は視線を動かせない。
智輝の綺麗な黒髪を滑ってぽたりと雨粒が落ちる。
「俺はずっと由佐が好きだった」
「…え?」
「でもチョコもらえなくてへこんだ。由佐に振られたから」
「ふ…!?」
振ってなんかいない。
振るわけがない。
「俺、由佐が好きだよ。由佐が俺をそんなに好きじゃなくても」
「え?」
「由佐、俺が近付くといつも身体引くから、近付かれたくないんだろうなってわかってるけど俺は由佐に近付きたい」
「え??」
「俺は由佐を抱き締めたい」
「……」
「義理チョコだっていいから由佐のチョコ欲しかった。少しだけでも好きでいてくれてるって毎年確認できて嬉しかったのに」
「……」
義理チョコ……少しだけでも…。
なんか勘違いされてる?
っていうか誤解がある…?
どくんどくん脈が速くなる。
「……だって俺、智輝が近付くと心臓おかしくなるから」
「由佐?」
「俺だって智輝が好きだけど、俺なんかがそんな事言っちゃいけないって、ずっと…っ」
涙がぼろぼろ落ちてきてしまった。
雨と涙が混じって頬を伝い落ちていく。
智輝が慌てて拭おうとするけど、手が泥だらけなので慌てて手を引いてシャツの袖で拭いてくれる。



