鬼景色



 華やかな商店の並ぶ大通りをはさんで、鬼はじっと、ひとりの少女の一挙一動を観察していた。

 少女は品のいい青色をした着物姿で、紺の風呂敷包みを持って歩いている。柔らかそうな黒髪は器用にうなじ辺りでまとめられ、着物に似合った青のかんざしで留められていた。

 しょっちゅう、通行人や商店の主が彼女に声をかける。
 すると少女は必ず、穏やかな微笑みを浮かべてひとりひとりに丁寧に返事をするのだった。そんなだから、彼女の歩みは遅かった。茶屋の軒に座った老人から、往来を駆け回っている子供まで、様々な人間が少女にひと声かけようとするからだ。

 大通りは人で溢れている。
 一体、鬼は、これほど殺しやすそうな標的を他に知らなかった。

 その他大勢に混ざって少女に近づき、声をかけ、ふいに彼女のかんざしを抜いて心臓をひと突きすれば、それで話は終わりそうだ。少女は声を上げることもできないだろう。少女は、自分が死ぬということさえ分からないまま、息を引き取るはずだ。そして鬼は、なに食わぬ顔で往来に溶け込んで消え、報酬を受けるためにザクロのところへ戻る。

 夜を待つ必要もない。
 刀を振るう必要さえない。
 なんというあっけない命……それが少女、景だった。