「よく帰ってきたね。さあ、こちらに来て話を聞かせてくれるかい、鬼」
煙管を持ち上げ、煙をくゆらせながら、女は言った。
女の語調は、命令口調でこそなかったものの、相手が自分の言葉に従うのに慣れている者のそれである。
事実、鬼と呼ばれた男は、言われたとおりに女の側へ進んだ。
すると女は目を細め、いっそ恍惚といってもいいような表情を浮かべ、男の着物の袖に鼻を寄せた。
「うん、いい匂いがする。綺麗に殺ったねえ、鬼。匂いで分かるよ」
男は答えなかった。
どういう形であれ、褒められているのは確かであるはずなのに、それに喜ぶことも照れることもせず、ただ女のしたいようにさせていた。
「このザクロには慧眼があるのさ。物事の本質を見極める力がね。子供だったあんたを拾った時から、あんたが素晴らしい刺客になるのは手に取るように分かった。まぁ、もちろん……」
そこまで言って、女はまた煙管をくわえて煙草を吸った。そして、ゆっくり煙を吐き出しながら続ける。
「『あれ』のお陰もあるけどね。でも、誰だって『あれ』を乗り越えられる訳じゃない。それが出来るあんたを見つけたのが、このわたし、ザクロだったって訳さ」
男は、やはりなにも答えなかった。

