時は有り明け方、東の空に太陽がゆっくりと昇っている。
現場に駆けつけた町奉行は、裏路地に転がった被害者の有様を見て、力なく首を振った。
「こりゃあ、普通の人間の仕業ではないな。こんなことができるのは、獣か、怨霊か、鬼としか思えん」
町奉行の後ろでは、助手と思える若い男が、眉をしかめて口に手を当てながら、ええ、と言ってうなづいている。
「相当に鋭利な剣をものすごい力で振るわないと、こうは切れませんでしょうね」
「鬼か」
助手は再びうなづいた。「ええ。でも、仏さんには悪いですが、これで町も少し平和になるかもしれません」
助手の言うとおり、裏路地に横たわる被害者は、奉行所では名の知れた悪人だった。きな臭い噂がいくつもあった、悪徳商人の頭だ。いつかしょっぴいてやろうと目論んでいたのだが、町奉行より先に辛抱を切らした人間が、他にいたというわけだ。
人間……と呼んでいいのか、分からないが。
それほど恐ろしい切り口だった。人の心を持った人間が、このようなことをできるものだろうかと思うほどに。
「鬼、か」
町奉行はまた呟き、朝日の昇る空に視線を移した。

