「きゃあ!」
少女は手にしていた風呂敷包みを地面に落とし、突き落とされたように背を下にして転んだ。一瞬のことで、なにか起ったのかまったく分からなかっただろう。
そして突如、キィンという鋭い金属音と共に少女の目の前にふたりの男が対峙していた。
「くっ!」
男たちのどちらかが、わずかな声を漏らす。
少女はただ目を見開き、恐怖におののきながら目の前の光景を見た。しかし見るといっても、少女から見えるのは彼女の前に立った男の背中だけだ。
紺色の着物の、大きな背中。
さらに数回、信じられないような素早さでなんども金属音が鳴り響いた。刀と刀が戦っている音だとは分かったが、そのあまりの素早さに、何十人もの男が同時に刀を振るい合っているのではないかと思えるほどだった。
少女の背筋が震える。
しかし戦局は、長くは続かなかった。
大きい一撃が振るわれる音がして、人が倒れる音がそれに続く。
どちらかの男がまた苦しげなうなり声を漏らし、そして、誰かが駆け出していく地面を蹴る音がする。
そして静かになった……。
すべては、ほんの一瞬の出来事だった。
鬼はゆっくりと刀を脇に降ろすと、上がった息を肩で整えようとした。
──さすが剣だ。
他の相手のように一瞬で打ちのめすことはできなかった。しかし、自他ともに認めるように、鬼と剣では技能に差がある。少なくとも一対一で正面からやりあって、鬼が負けるということはなかった。手応えはあったが、苦戦と呼べるほどのものでもない。
息が整うと鬼は刀を鞘におさめ、後ろを振り返った。
そして、地面に座り込んだ少女を見下ろした。
少女、そう……景を。

