カナダの紅葉は日本のものより、色が鮮やかだ。それは寒暖差があって一気に色づくかららしい。日本の侘び寂びを感じる色合いの紅葉も素敵だが、私は赤や黄色にはっきりと色付いたトロントの紅葉を気に入っていた。街中では原色の世界に野生のリスがウロウロしていたりする。まるで、おとぎの国に迷い込んだ気分になれた。

「ダメだ。人が多いだろう」
清一郎さんは人が多い場所を避ける。

「私が運転するからダメですか?」
「お前は運転禁止!」

国際免許証に切り替えは簡単だったが、運転ルールは日本と微妙に違う。一度、道を逆走しそうになってから運転は禁じられている。

「紅葉なら、トロントアイランドで良いだろ」

私たちはハーバーフロントというオンタリオ湖に面したエリアに住んでいる。
船で五分で行ける場所がトロントアイランドだ。人がいなくて空いていて自然も沢山で素敵な場所で気に入っている。偶には遠くに行きたいというのは私の我儘かもしれない。

「僕はトロントアイランドでいいよ」
「私は遠くに行きたい。トロントアイランドはもう飽きたよ」

気遣いのルイと、自己主張の強いサラ。二人の意見は真っ二つだ。