愛を伝える機会も、何もしないようなデートも足りなかった。付き合った女がの数が多かっただけで、俺は恋愛初心者だった。

───少し強引なくらいの方が女の子はときめくはず、他の男と一緒にいる事に嫉妬するくらい真夏ちゃんに夢中な事を知って欲しい。

聞き齧ったマニュアル通りに彼女の気を引こうとした結果は惨憺たるものだった。

透き通るような白い肌と温かな温もりに安心したのはあの時の自分だけ。
彼女がどんな言葉を浴びせられ、どんな気持ちで合鍵を返したのか想像すらしなかった自分が情けない。

彼女が弱い抵抗しかしないのを、受け入れていると勘違いする愚かな自分。「嫌よ嫌よも好きのうち」だなんて都合の良いことを考えたりもした。

───抵抗しようと思えば彼女は自分よりずっと体格の良い男も倒せるはずだ。

自分が激情にかられ彼女にした事が間違っていたと分かったのは、翌朝隣に彼女がいなくなった時だった。