京極清一郎なら、ハニートラップも朝飯前だろう。
男の俺から見ても、大人の色気があり引っ掛かりそうだ。ウブな真夏ちゃんが彼の毒牙にかかったらどうなるかと想像もしたくない。

俺のことが好きなのに、告白もできず付き纏うしかできない控えめな子だ。男慣れしていないどころか、あの夜、真夏ちゃんは初めてだった。戸惑いながらも俺に必死にしがみついてきた健気な彼女。一生大切にしたいと思っていたのに、残酷にも引き放された。

やっと見つけた真夏ちゃんを愛おしそうにバックハグしている京極清一郎が憎い。
そして、真夏ちゃんはどうして彼の手を振り解いて俺の方に来てくれないのだろう。

大好きだった仕事を辞めさせられたのは、間違いなく俺と付き合ったせい。
彼女が俺を着信拒否し、連絡をブロックしたのも父からの指示だったと分かっている。

彼女がヤクザの娘だとか今はどうでも良い。
俺にとって真夏ちゃんは、ピュアで可愛い彼女だ。
戸惑ったような顔をした真夏ちゃんは今何を考えているのだろう。とにかく、やっと彼女に辿り着いた。京極清一郎から彼女を奪ってみせる。

「真夏ちゃんを離してください。彼女は俺の恋人です」