京極清一郎は俺を知らないだろうが、俺は彼を知っていた。

涼波食品は五年前に訴えられた。
あるレトルト食品の食べ過ぎで心疾患になったと訴訟を起こされたのだ。

父が会見で、「どんな食品でも、食べ過ぎは毒」だと言った言葉が大炎上。危うく会社が傾きかけた。顧問弁護士が頼りにならんとばかりに、その時に父が依頼したのが京極清一郎だ。
彼は実はうちの大学のOBで、大学在学中に司法試験に合格し首席卒業をしたレジェンドだ。弁護士になってからの活躍も目覚ましく、絶対負けない弁護士として有名だった。

父は藁をも縋る勢いで彼に依頼すると、瞬く間に訴訟は取り下げられ示談となった。

それどころか、被害を声高に訴えていた男は実は持病あったと告白。高血圧に糖尿病まで元々患っていて、妻にも先立たれ涼波食品のレトルトを食べる事だけが楽しみに生きてきた。レトルト食品でありながら、健康に気遣った製品である素晴らしい食品を作る企業を訴えたのはひとえに自分の弱さとまで謝罪をした。

俺は正直、突然訴えてた会社のPRをしだした男に不自然さを感じた。