私を見るなり立ち上がった男は一瞬鋭い目つきで睨んだかと思うと、ニッコリと笑った。

「真夏さんが美しくて一瞬見惚れてしまいました。京極清一郎と申します。どうぞ以後お見知り置きを」

彼が差し出してきた手に気がつかないふりをして、私は父の隣にゆっくり正座した。「美しい」などと社交辞令を言われるのは気分が悪い。私は自分が華やかさのかけらもない地味な女だとよく知っている。