そんな上手い話がある訳がない。相手は口車と薬でキャバ嬢を風俗嬢に落として儲けるのが得意なヤクザだ。
(⋯⋯逃げなきゃ)
私は部屋に戻り、サッと私服にこっそり着替える。そしてスマホを握りしめ廊下に出た。
エレベーターを待つ途中、スマホで『マナティー』について調べる。
『マナティー』はぶさ可愛い海の生物のようだった。一瞬、私のことを呼んだのかと思ったが、私を『マナティー』と呼ぶ人間は今までいない。『真夏ちゃん』、『シンカちゃん』、『お前』、『冬城さん』今まで男から呼ばれた自分の名前を思い出す。目を瞑る私はキスをされた気がするが、状況的に一番の容疑者は京極清一郎。でも、彼が私にキスをする理由が見当たらない。それよりも、なめことかを口にわざと付けて悪戯されたのを私がキスと勘違いしているの可能性の方が高い。
到着したエレベーターに駆け込む。とりあえず、キスの件は置いといて今はこのお腹の子を守り抜くことが先決だ。
ロビー階は真夜中のせいか人気がなかった。
エントランスの自動ドアが開いたかと思うと、まさかの人が現れる。
「ライ君」
「真夏ちゃん、やっと見つけた」
(⋯⋯逃げなきゃ)
私は部屋に戻り、サッと私服にこっそり着替える。そしてスマホを握りしめ廊下に出た。
エレベーターを待つ途中、スマホで『マナティー』について調べる。
『マナティー』はぶさ可愛い海の生物のようだった。一瞬、私のことを呼んだのかと思ったが、私を『マナティー』と呼ぶ人間は今までいない。『真夏ちゃん』、『シンカちゃん』、『お前』、『冬城さん』今まで男から呼ばれた自分の名前を思い出す。目を瞑る私はキスをされた気がするが、状況的に一番の容疑者は京極清一郎。でも、彼が私にキスをする理由が見当たらない。それよりも、なめことかを口にわざと付けて悪戯されたのを私がキスと勘違いしているの可能性の方が高い。
到着したエレベーターに駆け込む。とりあえず、キスの件は置いといて今はこのお腹の子を守り抜くことが先決だ。
ロビー階は真夜中のせいか人気がなかった。
エントランスの自動ドアが開いたかと思うと、まさかの人が現れる。
「ライ君」
「真夏ちゃん、やっと見つけた」
