「そんなに急いで食べると太るぞ。妊娠中に太ると子供が出て来られなくなるらしい」
自分の子でもないのに、妊娠について調べて親身になってくれる彼の優しさが沁みる。
このピザが美味しく感じるのは、そこに彼の思い遣りが入っているからだ。

「それが大丈夫なんですよ。私、カイザーですから」
「何をよくわからない事を言ってるんだ。まあ、笑顔になれるならいくらでも食べろ」

生き物に餌をやるように彼がピザを掴んで私の口元に当ててくる。本当に彼はよく理解できない。口では意地悪な事ばかり言うが明らかに私を気遣っているのが分かる。

いつも通り、お風呂に入りベッドに横になった。
普段は家に戻る彼も今日はこの部屋に泊まるらしい。昼間勝手に出かけたから、私を見張るつもりなのだろう。ベッドルームは三つもあるから問題はない。

就寝前にベッドサイドのスマホを見ると、佐々木雫からメッセージが入っていた。
『冬城さんお久しぶりです。新緑の綺麗な季節になりましたが、最近は如何お過ごしですか? お仕事、急に辞めてしまわれて会えなくなって寂しいです。良ければ今度お茶でもしませんか? お返事お待ちしています。佐々木雫』