淡いパウダーピンクのセットアップに、お花型のハイブランドのピアスとネックレスをつけた佐々木雫はどこから見ても良家のお嬢様だ。
彼女の指先のパールネイルがきらりと光った。普段、職場ではネイルが禁じられている。彼女はきっとライ君と会うために時間を掛けて指先まで可愛くしたのだろう。
美人で優しくて女性らしい彼女はライ君にお似合いだ。

「ライ様は全国展開するブロッサムホテルのご令嬢と婚約しております。とても仲睦まじいでしょう。会話をお聞きになりますか?」

私の耳にコードレスのイヤホンをしてくる間口さん。
イヤホンから何やら話し声が聞こえてきた。

『綺麗な目を初めは好きになったんです⋯⋯』

鳥の囀りのような女性らしい佐々木雫の声に私は思わずイヤホンを外してしまった。
(私以外もライ君の瞳を綺麗って思う人はいるに決まってるよね)

勝手にライ君との時間を綺麗な恋として終わらせようとしていた私は愚かだ。婚約者もいるのに、自分に好意を寄せてくる子がいたらその日に手をだすのがライ君。そして、簡単に身を捧げてしまった私は京極清一郎のいう通りアバズレ女。