ファイティングポーズをする私を無視し、彼が私を横抱きにする。ふわっと浮く感覚に思わず彼の首にしがみついた。至近距離の彼の表情がふっと柔らかくなったかと思うとベッドに下ろされる。

「英語の勉強になるから、海外ドラマでも見てろ」
彼から渡されたのは『崖っぷちな妻たち』と『セックス・アンド・ザタウン』だ。エッチ指数の高いラインナップに私は動揺する。
「もっと、胎教に良いアニメとかが良いんじゃ⋯⋯世界の名作劇場的な⋯⋯」
戸惑う私に彼はニヤリと笑った。

「アバズレ女が興味ありそうなのを持って来たんだがな」

私は彼の言葉に妙に落ち込んでしまった。私はライ君に純粋に恋をしていた。長い片想いがようやっと実を結んだ感覚だったけれど、彼にとってはワンナイト。
そして、京極清一郎から見ればお見合いした相手が他の男の子を妊娠している状況。アバズレだと思われても仕方がない。

「何か買ってくるか? フルーツとか食べたいんじゃないのか?」
「⋯⋯ピザが食べたいです」
ライ君の作ってくれた餃子の皮のピザが食べたい。彼にとって私は遊びでも、私にとっては本気だった。