私は思わず京極清一郎の顔を見た。私を微笑みながら見つめてくる彼に戸惑ってしまう。彼が私をここまで連れて来てくれたということだろうか。一度しか会っていないお見合い相手にとても親切な方だ。

看護師さんが病室を出ていくと一気に冷ややかな目を向けてくる京極清一郎。

「清一郎さん、ご迷惑お掛けして申し訳ございませんでした。お世話になりました」
私は自分で点滴の針を抜くと、立ち上がった。
ふらりと眩暈がしたかと思うと、温もりに包まれる。
私は京極清一郎に抱きしめられていた。

「お前は馬鹿か、妊娠しているのにあんな肉体労働をして」

私は妊娠していることを彼も知っていることに血の気が引く。

「すみません」
「何に対して謝ってるんだ? 女なんて皆アバズレだって知っているから、期待もしていない。お腹の子は俺の子として報告してある。お前のことだから、どうせ産むんだろ」

軽蔑するような視線が怖い。そして、彼はどこまで私のことを知っているんだろう。私がライ君の家族から拒否されているのを知っているかのような口ぶりだ。

「何で報告しちゃうんですか? この子たちもヤクザの子になるなんて絶対嫌です」