社長室の扉をそっと閉めて、私はそっと頭を下げる。

「入社三年目の冬城真夏です。今日は⋯⋯」
「冬城真夏、君を解雇する」
挨拶をぶった斬ってかけられた涼波社長の突然の言葉に、私は頭を勢いよく上げた。

「車の件でしょうか?」
震える声で尋ねる私に社長は冷たく言い放った。
「弊社では暴力団、暴力団関係者は受け入れない。寮も可及的速やかに出ていくように。以上だ。下がってくれ」

頭が真っ白になる。私はずっと自分の生まれから抜け出せないのだろうか。大好きな仕事を辞めたくない。

「どうして急に⋯⋯」
「全く騙されたよ。無害そうな顔をして採用担当者は懲罰にかけなきゃだな」
「やめてください。責任は全部私にあります。申告義務を怠ってました。今すぐ、この会社を立ち去ります」

手が震える。私は結局、堅気の世界では生きられないらしい。さっきまで幸せいっぱいだったのに、突然真っ逆さまに地獄に突き落とされたようだ。

「それから、息子と関わるのもやめてくれ」
「息子とは早瀬ライさんですか?」
「そうだ。ライの部屋に泊まったらしいじゃないか。後で、妊娠したとか虚言を吐いてたかるつもりだったのか?」