初めて料理をするというような小学校低学年の子が多く参加し、得意げに野菜を炒める姿がたまらなく可愛い。IHなのにフライパンを持ち上げて、安全装置が働き熱源が消えてしまうのはお約束だ。

和気藹々と料理する親子を見て、私はライ君との子供を想像してしまった。私の両親は料理をした事がないし、私も自炊は殆どレトルトを使用している。でも、ライ君みたいに冷蔵庫にあるもので、ささっとアイディア料理とか作れるようになりたい。
(まずは基本料理だよね。肉じゃがとか作ってみたい!)
楽しい時間はあっという間で、終了時刻になり制服から私服に着替える。

帰りに常備野菜を買いに行くことを決意し、帰途につこうとした時だった。

佐々木雫が私に足早に駆け寄ってくる。
「冬城さん、さっき内線で今から本社の社長室に来るようにって連絡がありました」
「社長室?」
私の頭の中はクエッションマークでいっぱいだ。来年度からの配属の件にしても、末端平社員の私に社長直々というのは不自然。

「冬城さん可愛いから、社長秘書にスカウトされるんじゃないですか?」