私の手をグイグイ引っ張るライ君は子供のように無邪気な顔を見せてくれる。
水飛沫が敢えてかかる場所に座りたがるライ君が本当に可愛い。
お客としてガソリンスタンドで働く彼を見ていた時のライ君は大人っぽく見えていたが、意外な面を昨晩から沢山見せてくれる。

爆音の中、イルカが輪を潜ったりジャンプする。音響は人間の私でも煩いと感じるくらい大きい。人間より高周波を聞けるくらい耳が良いと言われるイルカ。
この環境で過ごすのは辛くないだろうか。イルカは調教師を乗せたりしているけれど、本当はそんな事をしたくないのではないかと考えてしまった。

「イルカはうるさくないのかな。人を乗せたり重くないのかな」
「そんな事を考えるなんて、真夏ちゃんらしいね。この環境に慣れてるから大丈夫だと思うよ」

私はふと嫌っている極道の世界を思い出した。刺青、暴力、薬物。あの世界に生まれた癖に私はあの世界に染まってないから苦しい。

「このイルカたちを海に逃してあげたい」
「海に逃げたら、自分で餌をとったりしなきゃだから大変でしょ。ここで育ったイルカはここでしか生きられないよ」