そんな言葉をこんな時に掛けられる彼は、実は女慣れしているのかもしれない。
私を一目惚れさせるくらいの見た目の良い男だ。

彼にとっては自分に気持ちを寄せる女の子の一人をお持ち帰りできたくらいの状況だ。

そう思うと虚しさが押し寄せてくる。
心にずっと秘めていた想いを告げたくなった。

「ライ君は私にとって、この四半世紀生きて来た中で一番好きな生き物⋯⋯。ライ君は私の希望だよ。私はライ君が心から好き、でも、私は綺麗な子じゃないから、このバスローブの下を見た人間は卒倒するよ」

私の言葉に彼が目を瞬かす。

「今のって告白? 真夏ちゃんも俺を好きって事で良いんだよね」
「真夏ちゃんもって⋯⋯ライ君、モテるんだね」

私はその他大勢の一人である事を再確認しひどく虚しくなった。

「俺も真夏ちゃんが好きって事だよ。いつからだろう、分からないけれど些細な君との会話を宝物のように感じるようになってた」

お客と店員だった彼と私はそれ程お互いを掘り下げてはいない。ただ、いつも丁寧に車の窓ガラスを拭く彼が好きだった。短い時間で話し掛けて彼の情報を集めては何度も反芻した。