帯をするりと解いて着物を脱ぎ浴室に入ると冷静になる。

シトラスの香りのボディーソープはライ君が普段使っているものだろう。
彼から常に香る爽やかな香りが好きだった。
(シャワーだけ軽く借りるか⋯⋯)

カチカチの体で渡されたバスローブに着替えて、ダイニングに行くと美味しそうな匂いがした。

「ピザの匂い」
「餃子の皮でピザ生地作ってみたんだけど、どうかな? クリスピーだと思って目を瞑って」

ライ君が申し訳なさそうに出して来た中華風ピザからは、冷蔵庫にあるもので私の要望を叶えようとした彼の優しさを感じた。
横にあるホットケーキにある文字に涙が溢れる。

『ハッピーバースデー』とケチャップで書かれたホットケーキ。

「凄い。ライ君は天才だね。最高の誕生日だよ」

私の言葉に彼が頬を染めた。
期待して良いのだろうか、彼も少しは私を想ってくれている事を⋯⋯。

手を合わせてライ君のお手製ピザを食べる。餃子の皮を円状に敷き詰めて、油でカラッと揚げて野菜炒めにチーズを乗っけて焼いたオリジナルピザ。愛情の味があるとしたら、こんな味なのだろう。心の底まで温かくなりそうな優しい味がした。