私の作り出した人格が惚れていた男は未だ呆然と空港の入り口で佇んでいた。

「京極さんの車で戻るわ」

私の言葉に、涼波ライは捨てられた子犬のような顔になる。
彼の瞳には自分とそっくりのアースアイを持つ双子が映っていた。

「ここでお別れよ。涼波ライ。貴方は自分の子を大事にしなさい。この子たちはパパが大好きなの」

双子が京極清一郎に抱っこをせがんでいる姿を見て、涼波ライは涙を流していた。

私の作り出した人格が愛した男は弱っちい。
流されやすいう上に、大人の癖に傷ついた感情さえ隠せない。
確かに私の作り出した『真夏』は、男の弱さを愛おしいと思える優しい人格だった。

でも、私は目的の為に最善の道を感情抜きに選ぶ。
（感情抜きか⋯⋯）

私はパパの顔をした京極清一郎をチラリと見た。
こんなお父さんが欲しかったと幼い時から願っていた理想的なパパだ。

「バイバイ、涼波ライ」

バッグミラー越しに泣き崩れる涼波ライが見える。

その姿を見て情けなさに呆れてしまう。
（子供を守れなきゃ父親じゃないわ）

私はつくづく自分と男の好みまで正反対の人格を作ったのだと感じた。