スラム街に生まれ、何の疑問もなくギャングになった彼女は、その時初めて罪悪感を持ったという。その感情は日毎に膨れ上がり、耐えきれなくなった彼女は逃げた。

辿り着いた先でまた彼女に銃を握らせようとしていた俺は酷い男だ。
ファンタジーリゾートには俺たちを知る日本人と出会すのを恐れて、真夏を連れて行ってあげる事ができなかった。動物をテーマにしたエリアにあるから連れて行ったら笑顔を見られたかもしれない。

ふと、一年前にトロント動物園に連れて行った時の真夏の姿を思い出す。檻の中にいるホワイトライオンの赤ちゃんを切なそうに見つめていた。

『この子たちはここから出たら本当に生きられないのでしょうか?』
『流石に無理なんじゃないか? 赤ちゃんだし⋯⋯』
『まだ、何にでもなれる子たち。このまま連れ出してサバンナに解き放ったら、生きる力はつきませんか?』
『親が付いて守ってあげないと無理だよ』

食い下がってきた真夏は、ベビーカーで眠るサラとルイを見つめていた。彼女は自分が自由になる以上に双子が自由に暮らす事を望んでいる。真夏も双子も俺が必ず極道の世界から解放してやる。