モノトーンで統一された部屋はスタイリッシュで、窓ガラス越しに東京タワーが見える。
東京タワーは赤い派手な光を放っているのに、寂しそうに見えるのが不思議だ。きっと、東京スカイツリーが現れたせいだろう。

「素敵な部屋だね。ライ君って実はお坊ちゃま?」
「まさか! このマンションは俺の母が父親から手切れ金代わりに貰った部屋。真夏ちゃんこそお見合いするなんて今時珍しい。実はお嬢様?」
私は彼の質問に首をもげそうなくらい振った。

「違うよ。普通の家の子だよ?」
彼に離れて欲しくなくて嘘をついた私の声は驚く程震えていた。
私は自分が「普通の家」の子ではないと自覚していた。

私は「お嬢」だが、「お嬢様」ではないので、半分は本当のことを言っている。
実家はお札を燃やして遊ぶ程に沢山の金があるがあるが嘘をついてはいない。
下品で下劣な金の稼ぎ方をしている家に生まれた私はお嬢様ではない。
「お嬢様」の定義は金ではなく育ちによるものだと理解している。

「真夏ちゃん、お腹は空いてない? 何か食べたいものある?」
まるでカップルのような会話を仕掛けてくるライ君に口元が緩んだ。