同じカナダの都市バンクーバに比べ日本人が少ないから、見つかる確率は減る。大きなチャイナタウン、コリアンタウンがありアジア系の移民が多いせいか、人種差別も少ない。

下見にいった時に、街中に普通にリスがいた。差別で嫌な思いもしないで、動物好きの真夏が楽しそうに暮らせそうだ。

日本で冬城真夏は涼波食品に就職して楽しそうにしていた。彼女が自分で幸せな道を歩めている間は俺の出番はない。

そんな風に思っていたある冬の日。俺と真夏のお見合い話が持ち上がった。正直、対立する二つの暴力団の縁を結ぶような意外な動きに俺は警戒した。
冬城源次郎からの申し出を訝しく思っていた父が二つ返事でお見合い話を受けたのには訳があった。

「真夏は私の娘じゃありません。アレがいる限り日本の警察もうちには手が出せないんですよ。うちの守り神と京極組の頭脳を合わせてデカいことやりませんか?」

───冬城源次郎の話は常識を超えていた。徳永渚は妊娠中に極道の世界に入ってきていた想像以上のクレイジーな女だった。

『このお腹の中に、爆弾がいます。退屈な毎日を面白おかしくしてみませんか?』