「チンピラ？　こいつはヤクザの御曹司だし、俺らはこの辺りを仕切っている暴走族だ」
「ヤクザ？　暴走族？　人に迷惑を掛けるのは最低な事ですよ。この河原でザリガニを釣りたそうな子供たちも困ってます」

その女の子は俺の破れたシャツの隙間から見える虎の刺青を見ると顔を顰めた。近くの橋の辺りで網を持った小さな子たちが俺たちを見ている。

「なんだこの女？　おい、さっさと剥いて回しちまえよ。多分、処女だぜ」

暴走族のトップ島袋が指示すると、興奮したような馬鹿男たちが彼女に群がり始めた。
堅気の世界の気弱そうな女が、不相応な正義感を持ったせいで危ない目にあっている。彼女もこれに懲りたら、アンタッチャブルな世界に首を突っ込まなくなるだろう。俺には彼女を助ける気力も気持ちもなかった。

「痛え、痛えよ」
急に暴走族の一人が騒ぎ出したと思ったら、彼女が驚くほどのスピードで男たちを薙ぎ倒していた。武器を奪い無表情に男たちを根絶やしにする。
（プロの殺し屋？）

暴走族も流石に女のヤバさに気がついたのか、改造バイクで逃げようとした。落ちているナイフを鋭く投げた女は次々とバイクをパンクさせてく。