「明日、ナイアガラの滝の裏観光とかしよう。ホテルのレストランを予約してるから、こちらにどうぞ」

王子様のエスコートのように手を差し出してくるライ君の大きなに私は手をのせた。
ライ君の頬はほんのり赤く、私ほど酒は強くなさそうだ。

───何とか逃げ出して早くサラとルイを守らないと⋯⋯。

後続車が駐車場に停まったかと思うと、中から出てきた人物に私は絶望した。

「真夏、三年ぶりだな」

颯爽と現れたのは私の父である冬城組の組長、冬城源次郎だ。車から白い手が出て来たと思うと、胸の空いたピチピチの真っ赤な服を着た女が出てくる。恐らく父が今気に入っている女だろう。娘より若い女に手を出す彼に吐き気がする。
如何にも夜職出身の女である彼女は綺麗なつもりだろうが、振る舞いに育ちの悪さが滲み出ている。父はそう言った女を「公衆便所」と呼んでいた。父は女としてしか使えない人間は側には長く置かない。