私に連絡が通じない異常事態に彼が気が付いてくれればきっと何とかしてくれる。血が繋がってなくてもサラとルイに、愛情を注いでいた彼。双子の夜泣きに悩まされ寝不足で苦しんでいた時も、真夜中のミルク係をかって出てくれた。
サラとルイにとってパパは清一郎さんで、彼は間違いなく頼れる男だ。

ライ君が今度はデートで行った水族館の話をしていて、私は適当に相槌をうった。思えば清一郎さんとの思い出は山程あるのに、彼との思い出は殆どない。

若紫色の正絹の風呂敷に包まれた長方形の荷物をライ君が渡してきた。
「そうだ、真夏ちゃんのお母様からプレゼントを預かってきたんだよ。真夏ちゃんのお母様って気品があって素敵な方だよね」

「母に会ったのね」

ライ君が暴力団と関係を持つ入り口に母がなった事は容易に想像できた。
名家のお嬢様として生まれた母は立ち居振る舞い一つで相手の信用を得てしまう。母は相手によって自分をどう見せるのが一番良いかを常に理解している。

「真夏ちゃんのお母様だからね」

真っ直ぐに私を見つめてくる彼から目を逸らし、風呂敷をとくと中から桐の箱が現れる。