スマホの右上に圏外と表示されていて私は驚いた。
リムジンのカーテンを開けて外を見ると、既に高速道路に乗っている。
こんな街中の高速道路で圏外なんてありえない。おそらく、妨害電波を使われている。

「ライ君、私、連絡を取りたいの。私が迎えに行かないと子供たちが心配するわ」
「誰に連絡するの? 京極清一郎? 俺と会話する方が大事だよね」

ライ君がシャンパングラスを床に叩きつけた。
カシャンと叩きつけられ、無惨にも割れるグラス。
暴力で脅して相手に言うことを聞かせる。
彼はこの三年で変わってしまった。おそらく暴力団と付き合い始めたせいだ。

「ライ君、私、結婚してるの」
「知ってるよ。でも、真夏ちゃんが好きなのは俺でしょ。無理矢理こんな遠くに連れてこられて孕まされた上に、好きでもない男の子供を育ててるなんて可哀想な真夏ちゃん」

急にギュッと私を抱きしめてくる彼に私は動揺した。シトラスの香りも温もりも記憶にあるそのままだ。ずっと忘れたくても忘れられなかった大好きな人。