しとしとふる雪を見ながら私はライ君に想いを馳せた。
彼にとって私はこの降っては地面に落ちて積もって形を失う雪のような存在。
それでも、私の気持ちはこの降り続く雪のように降り積もっていく。
目的地に到着しそうなところで、傘を差して帰途についていた片想い中の彼を発見した。

「止めて!」
私はタクシーの運転手に一万円を渡すと、ロックを外し慌てて外に出る。

「ライ君!」
「真夏ちゃん? その格好どうしたの?」
彼の疑問はもっともだ。
私は着物にスニーカーというエキセントリックな格好をしている。

ライ君は小走りで私に駆け寄り、自分の差しているビニール傘を差してくれた。

サラサラした茶色い髪に涙袋のはっきりした甘いルックス。
色素の薄い独特な虹色の色彩を宿した瞳。
顔に似合わず服の上からでも分かるがっしりとした肉体。

私は彼との三年前の出会いの記憶がフラッシュバックする。新入社員でへとへとになりながら、雨に濡れる私を彼が追いかけてきて傘を刺してくれた。
あの時は私が私服で彼はガソリンスタンドの制服を着ていた。