何故ライ君は私を前にそんな穏やかな顔ができるのかと、恐怖と怒りで震えが止まらなかった。
優しくて素敵な人だと思ってたのに、私を性欲処理の道具としか思ってなかった彼。

それでも三年想いづけた恋を綺麗なまま終わらせたいと私は真実から目を背けた。
安っぽいモーテルで無理矢理に抱かれた夜も、頑なに目を瞑り彼の本当の姿を見ようともしなかった。

売春や薬の取引が行われるような場所は、淫猥な雰囲気に包まれていて私の恋を穢されるようで息苦しかった。

「まだ、私を弄びたいの? 私、ライ君が本当に好きだったのに酷いよ。私、今、幸せなの。もう、放っておいて⋯⋯」

私の言葉にライ君が目を見開く。
日本のニュースサイトで見たが、彼はイケメン敏腕若手社長として有名になっていた。
女など不自由はしないだろうに、地味で美人でもない私をまた騙そうとしている。男は一度抱いた女を冷凍のパンと同じように解凍させれば抱けると考えると聞いた事があるが、どうやら真理だったようだ。

「真夏ちゃん、話をしよう。君は誤解してる。俺は真夏ちゃんを心から大切に思ってるよ」