俺たちはあわてて服を着て、出かける準備をした。
「あ、真白には言ってなかったけど……」
「??」
りーくんは螺旋階段を下りながら話す。
「今日、俺、真白んち泊まるから!
もうおばさんに許可とってる。
もちろんお兄さんの許可もね!
布団、真白の部屋に用意してくれるみたいだから。
今晩、よろしくね!」
(…………)
「はああああ?」
(なっっっんでうちの家族は報連相ができねーんだよ!)
「聞いてない!聞いてないってば!!」
「ははははは」
「ねぇ!心の準備!心の準備まだなんだけど!
俺のペース、大切にしてくれるんじゃなかったの?」
「真白に任せてたら一生停滞しそうだから、
時には強引に進めるのもありなんですよ!」
「なにそれ!話がちがうー!」
「ほら、2ケツするぞー」
グランドピアノに、吹き抜けの天井。
りーくんちの玄関ホールは、音がきれいに響く。
けれど、オシャレな螺旋階段から聞こえるのは
いかにも男子高校生な会話で、
決して大声で響かせるような内容ではない。
そのギャップがおもしろくて、
俺はニヤニヤしながら自転車の後ろに乗った。
「なーに笑ってるん?」
「秘密~」
3月の夜風はまだまだ冷たく頬をさす。
俺はりーくんにぴったりくっつき、
背中の熱で暖を取る。
耳をくっつける。
パーカーごしにどく、どく……と
心臓の鼓動が聞こえた。
(……なんか、泣きそうだ……)

