俺たちはりーくんの家に向かった。
バスの中、バス停からの道のり、そして部屋に入るまで
俺たちはずっと手をつないだままだった。
「真白、緊張してる……?」
「あ、あたりまえでしょ……」
「だよね、ごめん」と言う、りーくんの声も
少し震えているのがわかった。
それだけで十分だった。
りーくんが、そっと俺の手を引く。
「俺の制服、真白が脱がせて。
これで見納めだよ。だから、真白の手で脱がせて」
緊張と期待と不安がまぜこぜになって、
さっきからずっと動悸が激しいままだ。
なのに、そこに名残惜しさまで加わって……
「……手、震える……」
「大丈夫。俺も一緒。ほら」
俺の頬に重ねた手は、たしかに震えていた。
電気を消して、カーテンを閉めても部屋は
ちっとも暗くならない。
春の陽気がカーテンの隙間から漏れている。
「……もぉ、はずいぃぃぃい」
「なーんで。ちゃんと見せて」
おそるおそる目をあけた。
りーくんの熱のこもった目。
2人の視線がぱっちりと合う。
その瞬間、優しいキスがふってきた。
熱を含んだ静けさの中、
俺たちは2人だけの世界に沈んでいった――。

