お兄ちゃんの親友が、俺にだけ溺愛がすぎる





りーくんは、俺の手を握ったまま、
俺の目をまっすぐみつめた。

「うん。俺ももう付き合ってるって事、隠したくない。
だから……聞かれたら、正直に言うようにする」

胸の奥が、きゅっと縮まった。
嬉しいのに、怖い。でもやっぱり嬉しくて……
気持ちの置き場所が見つからない。

「それでも、まだ不安なら──」

りーくんはそこで小さく笑った。
でもどこか含みのある笑み。

「真白にひとつ、いいことを教えてあげよっか」

(なんか、小学生の悪ガキみたいな顔してる……)

「これはね……
誰も知らない、超一級の極秘案件だよ」

「な、なに……」

良いこととも悪いことともとれない、
微妙な表情。
俺の心臓は小走りで動き出した。

「実はさ──」

りーくんは、もったいぶるように少し間をあけた。

「君のお兄さん……
中学の時から、ずっとひとりの人に片思いしてるんだよ」

「……は?」

意味がわからなくて、瞬きが増える。
りーくんは構わず続けた。

「まあ、真白は俺らと同じ学年じゃないから
知らないと思うけどさ。1つ上にいたのよ。
女子バレー部でキャプテンで、美人でマドンナみたいな人が」

いきなりおにぃの過去の話をされて、
頭が追いつかない。

りーくんはニヤッと笑った。

「で、なんで君のお兄さん、
この高校に決めたんだと思う?」

「え……? いや……確かにお父さん、
なんでレベル下げるんだってめっちゃ怒ってたけど……」

「そう。そこなんだよ」

りーくんは人差し指を立てた。
“ここから本題だよ”と言わんばかりに。

「なんとね──
その片想いの“先輩”が、この高校に進学したからです」

「………………………は?」

俺は体の全部が止まった。
呼吸も、まばたきも、心臓さえも。

「びっくりしたでしょ」

りーくんは楽しそうに続けた。

「そう。夏樹の好きな人、千秋先輩って言うんだけど。
その人がここに来たから、進学先変えたんだよ。
先輩を追いかけてね」

「ちょ、ちょっと待って……」

声が裏返る。

「好きな人がここに来るって知って──
それで進路変更したってこと……?」