入学式も一通り終わり、
人の波に押されるように下駄箱へ向かった。
新しいローファーに履き替えようとした瞬間、
「うわ、真白いるじゃん!」と、声をかけられた。
顔を上げると、笑ったままこっちを覗き込んでいる
おにぃとりーくんがいた。
ふたりの後ろには女の子が群がっている。
「真白、制服超似合ってんだけど。可愛いー」
「そうかぁ?どう見ても“孫にも衣装”感はんぱねぇけど」
「そんなことない。ネクタイも似合ってるよ」
おにぃがロッカーに肘をつきながら、にやっと笑う。
「うまくできない―って、朝泣きついてきたもんな」
「な、泣きついてなんかない!嘘つくな!」
おにぃは俺を煽る天才だ。
俺よりなんでもそつなくこなすくせに
なぜか俺に恥をかかせてくる。
運動も勉強も、人間関係だってなんでもうまくできて
一応尊敬してるのに、こういうところだけは
本当に許せない。
「ね、真白。もう入学式終わったの?
俺らもあとHRだけだから一緒に帰る?」
「あ、入学式はおわったけど……
お父さんが“寿司でお祝いしよう”って。駅で待ち合わせしてる」
「はぁ?聞いてねーんだけど」
「おにぃは自分で断ってたじゃん。
真昼間に親と外食なんてごめんだって」
「寿司は別だろーがよ」
「はいはい、真白の入学祝なんでしょ。お兄ちゃんは
寂しく僕とファーストフードに行きましょうね」
「理人~?」
そう言ってりーくんが当然みたいにおにぃの肩を抱く。
その瞬間、後ろから「キャーッ」と小さな歓声が上がった。
中学の時もそうだった。
とにかくこの二人は目立っていて、
いつも周りには男女関係なく人が集まっていた。
そりゃ仕方がない。
認めるのはシャクだけど——おにぃは顔が整っている。
悔しいくらいのイケメンだ。
父の家系はみんな色素が薄く、身長も大きめだ。
燈佳もおにぃもお父さんも、俗にいう
”王子様”系の顔らしい。
俺は残念ながらお母さんの血を色濃く継いでいる。
色素はうすいけど、
この家族の中では素朴ね、なんて言われてきた。
もちろん理人くんだっておにぃと同じ。
正統派のイケメンではないけど、
影があってアンニュイな感じがたまらない~!
なんて言われている。
身長もあって、勉強もできて、スポーツも万能。
体育祭では二人ともリレーのアンカーを走っていたし、
極めつけに理人くんは合唱祭でピアノ伴奏までしていた。
あれはズルい。
あんなの、やられないわけがない。
男の俺ですら “すげえ……” って思ったんだから、
女の子なら余計に好きになっちゃうと思う。
でも、二人のすごいところは——
それに乗っかって遊び回らないってところだ。
調子に乗るでもなく、誰かを雑に扱うでもなく、
普通にまっすぐで、普通に優しい。
そんなところが、
また余計に周りを惹きつける理由なんだと思う。
(高校になってもそれは変わらないか。
というか……ひどくなってる?)
人だかりのざわめきを背に、
俺は呆れながら駅に向かった。



