お兄ちゃんの親友が、俺にだけ溺愛がすぎる






館外に出ると、空はすっかりオレンジ色から
紺色に変わりかけていた。

(……わ、もう夜じゃん)

「なんか、こうして夜に外にいるの新鮮だね」

俺が思わず漏らすと、
りーくんがすっと横に寄り添ってくる。

「だね。真白と夜に歩くの、なんか良い」

自分と同じことをりーくんも感じてくれてた。
それだけで胸がふっと温かくなる。
駅へ向かおうとスマホを見ると、
画面に“おにぃ”から通知が入っていた。

『今日の夜ご飯、理人の分もあるから連れて帰ってこい。
母さんが作りすぎた』

そのメッセージを見た瞬間、顔が勝手ににやけた。

(まだ、一緒にいれる!!)

「りーくん!おにぃがうち来てって!
なんかお母さん、ご飯作りすぎたらしい」

「え、マジで?」

「マジ。おにぃから!」

「いえーい!朝比奈家のご飯大好き!」

ふたりで笑いながら家まで歩く。
暗くなった帰り道。
昼間より気にせず手を繋げるようになった。
外が冷えてきた分、
繋いだ手の温度は、
昼間よりずっと強く、暖かく感じた。


家の角を曲がると、
見慣れた玄関の灯りが見えてきた。

(……もう家か)

俺はそっと繋いだ手を外そうとした。
……のに。

りーくんの指が、逆にぎゅっと絡んできた。

「え、りーくん……家、着くよ?」

「着くね〜」

すごく落ち着いた声。
まるで何も問題じゃないみたいに。

「いや、だから……離さないと……」

「なんで?」

「なんでって……家だし……!」

りーくんは俺の方をちらっと見て、
ほんの少しだけ口元を上げた。

「いいの、このままで」

そのままするりと玄関の前まで歩いていき、
手を繋いだままノックもせず、「ただいま〜」
って、完全に自分ちのテンションでドアを開けた。

「ちょ、ちょっと!?」

俺の抗議を無視して、
りーくんは靴を脱いで家に上がり込む。

「真白も早く」


(え、そんな、俺まだ心の準備できてない!!)