「やばぁ……! なにこれ、可愛すぎ!!」

「天使じゃん……王子様? え、王子様いた?」

「すご……朝比奈家の遺伝子どうなってんの?」

女の子たちが一気に騒がしくなり、
俺の周りが明るい空気で満たされていく。

「かわいいよね、燈佳。
自分の弟だけど、すっげぇ整ってるなって思う」

俺はちょっと照れ笑いしながら続けた。

「歳が離れた弟だからさ、
みんなにチヤホヤされすぎて
天狗になってるとこあるけど……
それでも可愛いから、なんでも許しちゃうんだよね」

女子たちが「わかる〜!」みたいな顔をしてうんうん頷く。

「燈佳はおにぃの顔の遺伝子を、
色濃く引いてるんだよね。
ほんと、同じ兄弟って感じしないくらい可愛い」

「え……? 朝比奈くん、もしかして……
自分は“美形じゃない”って思ってる?」

「え、いや、うん。俺は別に平凡でしょ」

「……うそでしょ? そんなことある?」

別の女の子が急に食い気味に割って入ってくる。

「いやいやいや、系統は確かに三人違うけど、
朝比奈くんも普通にイケメンだよ?」

「てか……自覚ないの? もしかしてゼロ?」

女の子たちが口々に言いながら
信じられないものを見るみたいな目で俺を見てくる。

(え……俺? マジで?)

その子たちとの会話が一段落して、
俺はそわそわした気持ちのまま
弁当を食べていた二人のところへ戻った。

ウインナーをつまみながら、
ずっと胸にひっかかっていた疑問が
我慢できなくなって口からこぼれた。

「……ねぇ、俺って……イケメンなの?」

その瞬間——
二人は同時に吹き出した。

「ぶっ……! なに急に?」

「え、いや、イケメンだよ。普通に」

「……ほんとに?」

「ほんとにだよ。
てか朝比奈くん、自覚ないの?」

もうひとりが、眉をひそめつつ笑って言う。

「みんな朝比奈くんのこと、近寄りたがいんだよ。
そりゃお兄さんが有名なのもあるけど……
君も十分“かっこいい”からだよ?」

「……俺が?」

「そう。ほら、話すとめっちゃ普通だし優しいし。
それでこの顔面なんだから……ね?」

二人はなんでもないように言ったけど、
真白の胸にはぽちゃん、
と小さな波紋が広がっていた。

(いやいや……イケメンとか美形っていうのは、
おにぃとか燈佳とか、りーくんみたいな
“選ばれた側”のやつのことだろ?
俺みたいなのが、
そんな肩書きを名乗っていいわけない……)

俺は自分で自分に否定のスタンプを押すみたいに、
胸の奥でひっそりと呟いた。