たとえば、親友が恋人になっても、ずっと厭がり嫌っていた恋愛をする側に自分が変わったとしても。
世界はなんだかんだと騒いでうるさいし、文也はなにもしなくても死ぬほど目立つし、おれは面倒くさがりで波風を立てないように生きようとする。
世界は何も変わらない。
恋をすれば世界がきらきらするなんてことはない。
相変わらずおれはバレーボールが一番好きだし、文也も「コスパ重視」とか言いながらバスケットボールをして、たまにサボって資料室で惰眠を謳歌している。
きっと文也に「俺とバレーどっちが大切なの?」って聞かれたら、自分でもクズだな、即答で「バレー」と返す。多分じゃなくて絶対に。
けれどもいつかそれが、たとえだいぶん悩んで、うんうん唸った後でも、本心から、「文也」だって言えるようになったら。
それににやつく文也にチョークスリーパーをきめて、痛い痛いと騒ぐ彼を笑えるようになったら。
愛も恋もくだらねえと言いながら、人に愛されることに慣れてしまったら。
そこには、スパイクを決めた後の高揚感にもよく似た、腹の底から笑えてしまって、目が眩んでしまうくらい幸せで、満ち足りた日々があるのだろうと思っている。
ベッドの上で二人ゲーム機をいじっている。
おおげさな効果音を聞き飽きて、「そろそろきゅーけー」と後ろに倒れるとぼふんとマットレスがおれの体重を支えてくれる。まったく、休み明けに模試とかを入れて来るなよな、と思いながら模試など関係なさそうに鼻歌を歌っている文也をじろりと睨みつける。
自己採点まで終えたこちらとしては高みの見物なのだが、模試の自己採点がひどいと泣きつかれるのもおれなので勘弁してほしい。
「おい謹慎坊主」
「なんかだんだん呼称が酷くなってるんだけど~」
「じゃあろくでなし」
「えー、スケコマシにしてよ」
「いやだ。おれ以外にスケコマしたらだめだ」
「エッ……」
とぅんく、とふざけた効果音を言いながら倒れてくる文也の胸を押し返す。
「……もう自分のこと傷つけんのやめろよ」
と念を押すが、聞いていなさそうな返事とともに「ねえてんちゃん、ピアス開けようよぉ」と聞き飽きたお誘いが飛んできた。つい膝を入れてしまった。ゴフ、と唸って文也が飛んでいく。アハ、つい。ついね。痛みに悶絶してベッドの上でダンゴムシみたいになっている文也を鼻で笑って、コントローラーを握る。
「なんでそこ頑固なの……」
「ツボとかあるらしいじゃんか」
「真面目か」
「至極真面目なんですが?」と言って、そういう顔をしてみせたら文也が耐えきれずにぶははっと笑う。笑うのと同時にバンバンとベッドを叩くので、べこべことマットレスが揺れた。手元が狂う。
ブッブー、効果音とともにゲームオーバーが表示される。コントローラーを投げた。
「でも、これは折れないよ俺。ね、ピアス開けよ」
「えー……」
「同じピアスあるから。ね、ファーストピアス」
「うーん……」
「おそろっちしようよ」
「……はあ」
ちらり、と横目で文也を見るとにっこり笑われた。
「お、折れてくれる気になった?」
「うるさいから、折れてやっただけ」
「おっけー、ピアッサー持ってくる!」
どうせ、表情であと少し押したらこちらが折れることくらい分かっていたのだろう。つくづく恨めしい奴。まあ同じ手をおれも使うのでお互い様ではあるか、と思いつつベッドに寝転んで待つ。
下から駆け上がってきた文也が透明なピアスとピアッサーを持ってきた。耳朶を消毒されて、瞬く間にピアッサーをセットされる。手際が良すぎて半ばドン引き案件だ。どれだけだよ。
痛くしたら殴る、と脅すと、おどけながら「任せろ」と微笑む。その顔がきれいで、ああ、やっぱり、おれはコイツには叶わないんだなと思った。
痛いのはあまり感じないので、穴を開けても、少し熱いか? と感じるか感じないかくらいの痛みだけで、まったくつらくなかった。文也は自分で開けてめちゃくちゃ痛くて半泣きだったと言うので鼻で笑ってやった。
開け終わって、ゲームを再開する。
この土日が終わったら文也もようやく学校に復帰だ。自宅謹慎であっても、「照生と結ばれたからプラスマイナスして圧倒的にプラス」とのたまいやがるので「将来的には圧倒的なマイナスだボケ」と頭を叩いた。
肩に頭をのせて、くふくふ笑っている。嬉しいらしい。
分かりやすすぎる態度の軟化に笑いながらも、
「なんでそんな嬉しそうなの」と分かりきった質問をしてやる。
すると、文也はココア色の目を眇めて、にこりと笑うと、「んー、照生がやっと俺のものになったなって」と言った。
いろんな思いや感情が乗せられたそれに、なんと言えばいいか迷って。
おれは結局、「おっも」と引いたような顔をつくってみせた。
おわり
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
初めての投稿で手探りな部分もありましたが、二人の物語を書き切ることができました。
もしよろしければ、読了のしるしに「いいね」や感想、レビューなどをいただけますと、作者にとって何よりの励みになります。 あなたの心に、少しでも二人の欠片が残れば幸いです!!
世界はなんだかんだと騒いでうるさいし、文也はなにもしなくても死ぬほど目立つし、おれは面倒くさがりで波風を立てないように生きようとする。
世界は何も変わらない。
恋をすれば世界がきらきらするなんてことはない。
相変わらずおれはバレーボールが一番好きだし、文也も「コスパ重視」とか言いながらバスケットボールをして、たまにサボって資料室で惰眠を謳歌している。
きっと文也に「俺とバレーどっちが大切なの?」って聞かれたら、自分でもクズだな、即答で「バレー」と返す。多分じゃなくて絶対に。
けれどもいつかそれが、たとえだいぶん悩んで、うんうん唸った後でも、本心から、「文也」だって言えるようになったら。
それににやつく文也にチョークスリーパーをきめて、痛い痛いと騒ぐ彼を笑えるようになったら。
愛も恋もくだらねえと言いながら、人に愛されることに慣れてしまったら。
そこには、スパイクを決めた後の高揚感にもよく似た、腹の底から笑えてしまって、目が眩んでしまうくらい幸せで、満ち足りた日々があるのだろうと思っている。
ベッドの上で二人ゲーム機をいじっている。
おおげさな効果音を聞き飽きて、「そろそろきゅーけー」と後ろに倒れるとぼふんとマットレスがおれの体重を支えてくれる。まったく、休み明けに模試とかを入れて来るなよな、と思いながら模試など関係なさそうに鼻歌を歌っている文也をじろりと睨みつける。
自己採点まで終えたこちらとしては高みの見物なのだが、模試の自己採点がひどいと泣きつかれるのもおれなので勘弁してほしい。
「おい謹慎坊主」
「なんかだんだん呼称が酷くなってるんだけど~」
「じゃあろくでなし」
「えー、スケコマシにしてよ」
「いやだ。おれ以外にスケコマしたらだめだ」
「エッ……」
とぅんく、とふざけた効果音を言いながら倒れてくる文也の胸を押し返す。
「……もう自分のこと傷つけんのやめろよ」
と念を押すが、聞いていなさそうな返事とともに「ねえてんちゃん、ピアス開けようよぉ」と聞き飽きたお誘いが飛んできた。つい膝を入れてしまった。ゴフ、と唸って文也が飛んでいく。アハ、つい。ついね。痛みに悶絶してベッドの上でダンゴムシみたいになっている文也を鼻で笑って、コントローラーを握る。
「なんでそこ頑固なの……」
「ツボとかあるらしいじゃんか」
「真面目か」
「至極真面目なんですが?」と言って、そういう顔をしてみせたら文也が耐えきれずにぶははっと笑う。笑うのと同時にバンバンとベッドを叩くので、べこべことマットレスが揺れた。手元が狂う。
ブッブー、効果音とともにゲームオーバーが表示される。コントローラーを投げた。
「でも、これは折れないよ俺。ね、ピアス開けよ」
「えー……」
「同じピアスあるから。ね、ファーストピアス」
「うーん……」
「おそろっちしようよ」
「……はあ」
ちらり、と横目で文也を見るとにっこり笑われた。
「お、折れてくれる気になった?」
「うるさいから、折れてやっただけ」
「おっけー、ピアッサー持ってくる!」
どうせ、表情であと少し押したらこちらが折れることくらい分かっていたのだろう。つくづく恨めしい奴。まあ同じ手をおれも使うのでお互い様ではあるか、と思いつつベッドに寝転んで待つ。
下から駆け上がってきた文也が透明なピアスとピアッサーを持ってきた。耳朶を消毒されて、瞬く間にピアッサーをセットされる。手際が良すぎて半ばドン引き案件だ。どれだけだよ。
痛くしたら殴る、と脅すと、おどけながら「任せろ」と微笑む。その顔がきれいで、ああ、やっぱり、おれはコイツには叶わないんだなと思った。
痛いのはあまり感じないので、穴を開けても、少し熱いか? と感じるか感じないかくらいの痛みだけで、まったくつらくなかった。文也は自分で開けてめちゃくちゃ痛くて半泣きだったと言うので鼻で笑ってやった。
開け終わって、ゲームを再開する。
この土日が終わったら文也もようやく学校に復帰だ。自宅謹慎であっても、「照生と結ばれたからプラスマイナスして圧倒的にプラス」とのたまいやがるので「将来的には圧倒的なマイナスだボケ」と頭を叩いた。
肩に頭をのせて、くふくふ笑っている。嬉しいらしい。
分かりやすすぎる態度の軟化に笑いながらも、
「なんでそんな嬉しそうなの」と分かりきった質問をしてやる。
すると、文也はココア色の目を眇めて、にこりと笑うと、「んー、照生がやっと俺のものになったなって」と言った。
いろんな思いや感情が乗せられたそれに、なんと言えばいいか迷って。
おれは結局、「おっも」と引いたような顔をつくってみせた。
おわり
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
初めての投稿で手探りな部分もありましたが、二人の物語を書き切ることができました。
もしよろしければ、読了のしるしに「いいね」や感想、レビューなどをいただけますと、作者にとって何よりの励みになります。 あなたの心に、少しでも二人の欠片が残れば幸いです!!
