僕「浩平がひとりで借りてるなら、大家さんに説明して部屋の鍵を開けてもらえないかな」
篤「えっ」

僕の提案に篤が心底驚いた顔をしています。
浩平がいなくなってしまったら管理だって面倒なことになるでしょうし、家賃滞納なんてことになったら更に面倒なことになるはずです。
大家としても早い段階でどうにかしたいと思うのが一般的ではないかと思ったんです。
そこで僕たちはアパートの隣にある大家の家を尋ねました。

大家さん「あら、あなたたしか浩平くんの？」

赤い屋根の素敵な家から出てきたのは５０代後半くらいの女性でした。
背が低くて柔らかな雰囲気をまとっているその人は篤を見てすぐにそう呟きました。

篤「はい、友達です。浩平が引っ越してくるときに一回だけ会いましたよね」
大家さん「そうね。久しぶり」

そう言った大家さんの視線が篤から僕へと移動してきました。
僕は自己紹介をして篤と浩平の友人であることを説明しました。

篤「実は浩平と連絡が取れなくなってしまって、あいつの会社から俺に連絡が来たんです」
大家さん「そうだったの？」