僕「ちょっと、人を探していまして、もしかしたら中学校にその人がいるかもしれないんです」

早口に説明する間に冷や汗が背中を流れて行きました。
まずい状況であることは変わりありませんから。

運転手「もしかしてお前、桃中学校の卒業生か?」

なにを思ったのか、運転手は都合のいい勘違いをしてくれました。
卒業生が母校を訪問するためにやってきたのだと思ってくれたんです。
僕はすぐさま頷きました。

運転手「なぁんだそれならそうと言ってくれよ。怒鳴って悪かったな」

運転手はそういうと二台を指さして「送っていってやるよ」と、言ったのです。
こんなチャンスは二度とありません。
僕と篤は男性に甘えてトラックの荷台に荷物のように乗り込んだのでした。

☆☆☆

トラックの荷台で風を浴びていると心地よく汗が引いていきました。
桃中学校に到着したときには少し肌寒くなっていたくらいです。

運転手「ここで待っててやるから行ってきな」

町の出身者だと勘違いしてからの運転手さんは優しくて、終始笑顔を浮かべています。
僕と篤は荷台から飛び降りて小さな校舎へ向かって歩みを進めました。