篤「見てないんじゃないか？　あいつが本物の幽霊をみたらそれこそ大喜びで連絡してくるだろ」
僕「それもそうか。あのアパートを取り壊せない理由っていうのは？」
篤「死者は出てないにしても、関係している会社の人間が次々病気になったり、事故に遭ったりはしてるみたいだな。これもただの偶然だろうけどなぁ」

そんな話をしている間にどんどん太陽は沈んでいき、あっという間に周囲はオレンジ色に包み込まれました。
少し肌寒さを感じてアパートへ視線を向けても、誰の気配もありません。

僕「さっきから人の出入りが全然ないみたいだけど、まさかあのアパートって」
篤「あぁ、浩平しか借りてねぇってさ」

やっぱり、そういうことらしいです。
いわくつきの上に立て直しもできないのであれば、どれだけ安くても暮らす人はいないのでしょう。
それこそ、浩平のような物好きでもなければ。

僕「このままずっとここで見張ってるつもり？」
篤「だってさ、他に方法ねぇだろ？」

篤はそう言ってスマホを確認しています。
浩平からの連絡がきていないのかチェックして、落胆した表情になりました。
もちろん、僕のところにも連絡は来ていません。