玄関先で首を吊った女がいるんだとか

僕はかがみこんで花瓶を起こし、そこにグリーンを入れなおしました。
なんという植物なのかわかりませんが、森の中などで見たことがある葉のようです。
もう水がないので枯れてしまうでしょうけれど、気になったからです。

僕「この水、どこから準備したのかな」
篤「え? 水なら水道からじゃ――」

そこまで言ってここは廃屋だということを思い出したんでしょう。
篤は目を丸くして黙り込んでしまいました。
誰かが花瓶と花と水を準備して、わざわざ河島家に飾っている。
もう誰もいない家なのに。
そう思うと背筋が寒くなりました。
まるで大量の虫が体中を這いまわっているような気分です。
僕は右手で口を覆って立ち上がりました。
もうこれ以上キッチンにいたくなくて、篤の隣を通って部屋のドアを開けました。
その部屋はホラッシーが言っていたリビングに当る場所でした。
道側の窓は出窓になっていて、ホラッシーが謎の自転車のような音を聞いた場所のようです。
篤がライトで部屋の中をくまなく照らしていくと、出窓の端っこに細長い形状の青色の花瓶がありました。
中には赤い花が差さっています。
僕と篤は目を無言で目を見かわせました。