吉永家は〇〇村の中心部にありました。
木製の表札にはツタが絡まりかろうじて読み取れる程度になっています。
篤が玄関の引き戸を開けると、それはガタガタと音を立てながらようやく開きました。

篤「鍵は開いてるけど、荒れ放題だな」

玄関の中を確認して顔をしかめています。
後ろから覗き込んでみると敗れた新聞紙や濡れてしわしわになった雑誌が足元に散乱しているようです。
吉永家はあまり手入れされていないのでしょう。
壁にはスプレーで書かれたラクガキも散見しました。

僕「このまま進んで大丈夫かな」

荒れ果てた室内を見て急に心細くなった僕は篤の腕を掴んでそう聞きました。

篤「とにかく入ってみるしかないだろ」

気は進みませんでしたが自分で選んだ道です。
篤の後ろに続いて上がり框を超えて廊下へと進んでいきました。
廊下には室内に残されていた家具や小型家電があちこちに散らばっていて、足の踏み場もないくらいです。
変なものを踏んづけてしまわないとうに注意して、足元をライトで照らしながら慎重に進んでいきました。
廊下の突き当りにドアがあり、僕たちはそこで一旦立ち止まりました。

僕「この先も物が散乱してそうだから気を付けないとね」

玄関と廊下だけでこれほど荒れているのだから、奥はどうなっているのか見当もつきません。
窓ガラスやコップなどの破片があったら大変です。