タクシーもバス乗り場もない駅に篤が呆然とした表情で呟きました。

僕「そうだね。あとはヒッチハイクとか?」

冗談で言ったものの見渡す限り田畑が広がっていて民家は遠くにぽつぽつ見える程度です。
車が走っているところも見かけません。

僕「浩平は本当に○○村に行ったと思う?」
篤「おいおい、今更そういうこと言うのやめてくれよ。ただでさえ帰りたくなってるのにさ」
僕「ごめん。でも、浩平もここから歩いて○○村まで行ったのかなって、ちょっと疑問に感じてさ」

僕たちは三人ともバスケ部だったので多少の体力はあります。
けれど社会人になって5年目なので、その体力も日々の通勤によってすり減って行っているのです。
とても準備なしに○○村まで歩くことができるとは思えませんでした。
かといって、浩平がそこまで用意周到にして○○村へ行ったとも思えなくて、僕たちは立往生してしまったんです。

篤「とにかくさ、これからどれくらい歩くかわからないし、飲み物だけ買っとくか」

駅前に唯一立っている自販機に向かいながら篤が言いました。
こんな田舎でも自販機の飲み物の金額は都会とさして変わりないようです。