大家さん「もちろんよ。なにかあったら言ってね」

大家さんがこんなにスムーズに快諾してくれたのは浩平の両親は若いうちに他界していたことが原因だと思います。
施設で育った浩平を探すには、僕や篤の力が必要だと思ってくれたんでしょう。
アパートはワンルームで、玄関の右手に小さなキッチン。
左手にバストイレが設置されています。
都内の安物件ではよくある間取りで、一番奥が8畳ほどのフローリングになっていました。
目隠しの暖簾をくぐって奥へ向かうと途端に寒気が全身に駆け抜けていきました。
さっき公園で見た女性殺害のネットニュースを思い出してしまったからです。
今はもう綺麗になっている部屋ですが、この床に血だまりができていたのだと思うと気分が悪くなります。

篤「調べるところはあまりなさそうだな」
僕「うん。半畳のクローゼットと、本棚くらいかな」

真ん中にテーブルが置かれていて、空のペットボトルが転がっています。
床にはしばらく畳んでいないのであろう万年床。
それに小さなテレビがあるだけの簡素な部屋です。
とはいえ男の一人暮らしにしては随分と片付いている方だと思いました。