玄関先で首を吊った女がいるんだとか

篤が驚いて横へ飛びのき、目を見開いて女性を凝視しています。
女性はそんな篤に目もくれずにリビングへと出てきました。
二宮さんはその女性に寄り添うようにして立っています。

二宮「万葉、もう準備は整ったのかい?」
万葉「えぇ。それにふたりも来てくれて嬉しいわ」

万葉と呼ばれた女性が僕と篤を交互に見て嬉しそうに笑います。
その顔と、押入れの中から出てきた女の顔がダブって見えました。
あれは確かにこの人だった。
だけどこの人は今ここにいて、生きている。
なら僕が見たあれば生霊だったんでしょうか?

二宮「これでもうしばらくは大丈夫そうだな」
万葉「そうね、村の人たちを使い果たしちゃったときはどうしようかと思ったけれど、村に関係ない人でもいいなら、もう大丈夫よ」

ふたりの会話の意味がわかりません。
真っ青な顔をした篤がガタガタと震えながらふたりを見ています。

篤「ちゃんとこっちにもわかるように説明しろよ!」

篤の怒号に万葉が顔をしかめてため息を吐き出しました。
それはまるで聞き分けのない子供を見て呆れる親のような表情です。