篤「それならイジメなんてしなけりゃよかったんだ」
二宮「確かにその通りだ。だけどもう遅い。すべては起きてしまったことなんだからな。イジメはあって首吊りもあって、そして河島は自殺した。元々△△村の血を受け継いでる河島の魂は怨念となって……僕の妻にとりついた」

二宮さんの視線がリビングの奥のドアへと向かいました。
すりガラス戸の向こう側に人の影が動いているのが見えて、僕はゴクリと唾を飲み込みました。
なんだかとんでもなく嫌な予感がします。
だけどそんな予感などお構いなしに篤が立ち上がり、大股にドアへと近づいて行ったのです。

僕「篤！」

慌てて名前絵を読んで引き留めようとしたのですが、一歩遅かったのです。
篤はすでにガラス戸の前に立っていて、戸に手を伸ばしていたんです。

篤「浩平、そこにいるのか？」

篤が声をかけながら戸を開いた時です。
中からキィキィと自転車のような音が聞こえてきました。
そして篤を押しのけるようにして薄桃色のマフラーを巻いて車椅子に乗った女性が出てきたのです。
写真でみたよりも少し老けたように見えますが、間違いなく同一人物だということがわかりました。