玄関先で首を吊った女がいるんだとか

一刻も早く〇〇村から遠ざかりたかったんです。
走って走って、気が付くと店主のいる喫茶店の前までやってきていました。
喫茶店の明かりが見えた瞬間、ふたりとも涙目になりながら店の中へと駆けこんでいきました。
落ち着くBGMをかき消して逃げ込んできた僕たちを見て、店主が慌てて駆け寄ってきました。

店主「お前ら、どうしたんだ。泥だらけじゃねぇか!」
僕「で、で……出たんです!」

そこからなにをどう説明したのか自分でもよく覚えていません。
店主は口を挟むことなく話を聞いてくれて、なにも言わないまま怪我の処置までしてくれました。
それから僕と篤は店の奥の席で落ち着くまで待って、その場で店主が持たせてくれたお弁当を食べました。
気が付くと時刻はもう夕方近くになっていたんです。
そんなに長い時間の〇〇村にいたなんて信じられない気持ちでした。

店主「今日も寝るところがないんだろ?」
篤「いえ、今日はどうしても確認したいことがあるので、大丈夫です」

随分落ち着いてきてから、篤はそう言いました。
実はお弁当を食べている間に篤はすでに二宮さんと連絡を取り合っていたのです。