第一話

約束場所の喫茶店は雰囲気のいいところでした。
落ち着いたBGMとこげ茶色を基調にした店内にはコーヒーの香りが漂っていて、僕たち以外に数人のお客さんが座ってましたよ。
今日ここに僕を呼び出したのは高校時代の友人の篤でした。
篤と僕は高校3年間を同じバスケ部で過ごして、就職した今でも時々連絡を取り合う関係です。
そんな篤から切羽詰まった連絡が来たのは2日前の夕方頃でした。
取引先から電車で直帰していたところ電話がきたので、途中の駅で下りて電話に出たんです。

僕「もしもし篤?」
篤『よぉ、元気してるか?』

いつも通りの口調を心がけていたようですけれど、なんとなく元気がないように聞こえたんです。

僕「元気だよ。そっちは?」
篤『まぁまぁかな』
僕「なにかあったのか? やけに元気がないな」
篤『うん。ちょっと妙なことになっちゃって』

それがどんなことなのかその場で質問したんですけど、篤は言葉を濁すばかりでちゃんと教えてくれなくて、だから今日こうやって会うことになったんです。
篤は僕が喫茶店に到着して5分後にやってきました。